日本人の食生活の欧米化に伴い、虚血性心疾患、動脈硬化症、糖尿病のような生活習慣病と食生活、特に脂質の摂取との関係が注目されてきました。しかし、その一方で、食品と健康について多くの情報が氾濫しているため、市場に出ているさまざまな種類の油をどのように選び、どのように使えばよいのか混乱が生じているように見受けられます。
栄養学的にみると人体にとって脂質を摂取する意味は、【1】高カロリーのエネルギー源、【2】脂溶性栄養素の補給、【3】必須脂肪酸の供給の3つになります。
【1】については改めて説明する必要はないと思います。【2】は脂質に溶けるビタミンやそのほかの成分の補給が主で、特にビタミンEのほとんどを植物油から摂っています。【3】は植物油の主成分である脂肪酸の生理作用が人体の活動に不可欠の要素となっています。特に、n-6系のリノール酸とn-3系列のリノレン酸については、人間は体内でつくることができないので、必ず食物から摂らなくてはなりません。不足すれば必須脂肪酸欠乏症状が表れます。
この【2】と【3】についてはことさらに強調されることがありますが、人間が生きていくために必
要な量を摂取すればよく、現代の日本人の普通の食生活であれば特に意識して摂取しなければならないというものではありませんが、これらを少し多めに摂ることで、より良い効果を期待するのが、現在の栄養学の考え方といえるでしょう。
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