世界で高まる植物油の需要
高値が続く油脂の価格

 植物油に対する強い需要を反映してシカゴ市場における大豆油の価格が高値に張り付いています。この1年間のシカゴ市場の大豆油(原油)価格は、1ポンド(453g)当たり22~23セントで、2000年代初頭に比較して40%近く高い水準にあります。加えて、昨年半ば以降の円安が進み、日本円に換算した価格を押し上げています。昨年増加した植物油の輸入が、今年になって減少しているのは、このような事情を反映したものと見込まれます。

 これに対し、大豆圧搾に伴って生産される大豆ミールの価格はやや軟調の気配にあります。大豆ミールの主要な用途は家畜、特に豚、鶏などの中小家畜向けの飼料ですが、鳥インフルエンザの世界的な蔓延によって家畜飼養頭羽数が減少していることにともなって需要が弱含みとなっているためです。

 大豆油の価格が強い需要拡大に伴って上昇、大豆ミール価格がやや軟調という二つの異なったベクトルの間にあって、その原料である大豆価格が需給緩和にもかかわらず強含みで推移するという結果が生じています。このような大豆3品に主導されて、菜種と菜種油も同じような形跡をたどっています。オイルワールド誌によれば、ヨーロッパで取り引きされる菜種油の価格(fob)が最近では1トン当たり800ドルという信じがたい高水準となっています。ちなみに、3年前の同時期には580ドル前後、同じく1年前は660ドルの水準にありました。

 シカゴ市場は世界の穀物・農産物市場として、小麦、とうもろこし、大豆などの原料価格の動向については世界の注目を集めますが、それらから生産される加工品の価格はともすれば忘れられがちになります。しかし、これらをも観察しなければ、需給が、“超”という頭文字がつくほど緩和しているにもかかわらず、油糧種子の価格が下がらないというパラドックスが理解できなくなります。

 本年の油糧種子の生産が順調であったとしても、植物油に対する強い需要を反映して国際的な植物油の価格高は更に継続するものと予測されています。

 日本の植物油市場は、原料のほぼ全量を海外に依存していることから、油糧種子と植物油の国際市場と無関係に成立するものではありません。これから、国際市場の動向と密接に連動した動きが、日本の植物油市場において生じていくものと見込まれます。
PREVMENU