エルニーニョと植物油
1.フランスからの便り
 ― 伸びるオリーブ油の消費。健康に配慮した新製品も登場 ―


 フランスにおける植物油の消費は、食品産業向けは菜種油、一般家庭向けにはオリーブ油が重要性を増しています。また、フランスでも健康志向が強まる中で、ビタミンDを添加した植物油新製品も現れています。
フランスにおける植物油の総消費量

 フランスにおける植物油(オリーブ油を除く)の消費の動きを表1に示しました。ここで総消費量というのは一般家庭用向けだけではなく食品産業で利用されるものも含めた全ての消費量を意味しています。でも、この表にはオリーブ油を含めていません。フランスでもオリーブ油はちょっと高貴な植物油、だから、オリーブ油については別扱いでご紹介しましょう。

 フランスの植物油消費は、1981年からの20年間にほぼ倍増し、95年からは100万トンの大台を超えました。日本と比較すると少ないように見えますが、人口は日本の45%程度であることを考える必要があります。

フランスの植物油消費の中で、最も重要な位置を占めていたのはひまわり油。1970年代後半から消費量が増加し、86年から92年にかけて植物油全体の消費に占める割合も年に3%程度上昇してきました。しかし、93年から2000年にかけては年1%以上の低下を続けています。

 これに代わって重要性を増してきたのが菜種油で、90年代になって消費が著しく増加し、99年にはひまわり油を追い抜き、フランスで最も多く消費される植物油となりました。菜種油消費の増加をもたらした立役者は食品産業で、いまでは、マヨネーズ、ビスケット、魚の缶詰などに広く使用されています。

 また、2001年の特徴として、パーム油と大豆油が増加したことが挙げられます。パーム油は、2000年に、BSE発生防止対策として動物油脂を家畜飼料に添加することが禁止されたことから、その代替油脂として消費が増加しました。大豆油については、減少傾向にあったものが急に増加しました。これは、相対的に価格の割安感があったためとされていますが、今後も継続するかどうかは、2001年の数字だけでは判断できないところです。
表1 フランスにおける植物油(オリーブ油を除く)総消費量の推移

(単位:千トン)
  1993
1995 1998 1999 2000 2001
落花生油 86 76 52 52 52 38
大豆油 80 76 60 50 54 172
菜種油 139 289 316 390 479 551
ひまわり油 420 361 476 384 461 425
ヤシ油 82 61 93 77 48
63
パーム油
81 73 103 129 119 243
亜麻仁油 5 5 6 3 5 2
その他 53 94 96 109 112 132
合計 946 1 035 1 202 1 194 1 330 1 626
出典:フランス植物油・ミール製造業者組合(SGFHT)
増加するオリーブ油の消費

 植物油の中でちょっと別格を気取るのはオリーブ油。1990年代に消費が飛躍的に増加しました。91/92年度オリーブ油年度(11月から10月まで)の消費量約3万5千トンに対して2001/02年度には9万4千トンと、10年間で3倍近い増加となりました。この消費量は、イタリア(73万5千トン)、スペイン(59万8千トン)、ギリシャ(27万トン)には遠く及ばないものの、ポルトガル(6万トン)を上回り、EUで第4位の位置を占めています。

 また、国民一人当たりの消費量でみると、1.34リットルと急増しています。とはいえ、オリーブ油生産国であるギリシャの24.5リットル、イタリアの12.3リットルにはまだまだ及ばないところです。
表2 フランスのオリーブ油消費量の推移

年 度
消 費 量
(トン)
91/92    34,800
94/95    41,600
97/98    75,600
98/99    78,800
99/00    81,500
00/01    92,000
01/02 *  94,000
02/03 ** 96,500
出典  : 全国栽培油協議会(COI)
注*  : 2002年12月時点での予測値
 ** : 予測値
家計消費は金額ではオリーブ油がトップ

 フランスの家計での消費された植物油(オリーブ油を含む)は、2002年に金額で6億3000万ユーロ(約819億円。1ユーロ130円換算。)、数量で約25万6000トンと、前年に比べ、金額では4.5%増加したものの、数量では2.7%減少しました。

 油種別にみると、金額ではオリーブ油が第1位で全体の過半近くを占め、以下、ひまわり油、混合油と続いています。数量ではひまわり油、オリーブ油、混合油の順になります。単価が高いということもありますが、オリーブ香味油を含めるとオリーブ油の販売金額シェアは48%と、総消費金額のほぼ半分を占めていることは注目に値するべきことでしょう。
表3 フランスの家計における油種別消費(2002年)



販売額
(100万フラン)
シェア
(%)
対前年比 販売数量
(トン)
シェア
(%)
対前年比
オリーブ油 283.5 45.0 +6.7 53,490
20.9 -0.3
ひまわり油 173.2 27.5 +3.1 122,592 47.9 -6.0
混合油 79.4 12.6 +7.5 36,599 14.3 -0.4
落花生油 32.1 5.1 -5.4 15,100 5.9 -5.4
揚げ物油 20.2 3.2 +14.7 10,749 4.2 +8.9
オリーブ香味油 19.0 3.0 +13.7 3,327 1.3 +8.0
ブドウ種油 11.3 1.8 +7.1 4,607 1.8 +5.3
その他 11.3 1.8 -4.3 9,470 3.7 nc
合計 630 100.0 +4.5 255,934 100.0 -2.7
資料:流通業者調査(製造業者からの情報に基づいて作成されたもの)
 2002年は植物油の原材料が高騰した年でした。2002年初頭にオリーブの価格は高騰し、それがナショナル・ブランドやプレミエールプリ(“一番最初の価格”という意味で、低価格品を示す)の価格に反映し、家計での植物油消費数量は減少しました。ナショナル・ブランドでは、レジュール(Lesieur)が9.2%、プジェ(Puget)が8.4%とそれぞれ価格を引き上げました。一方、“流通マーク”(MDD。流通業界のPB製品)は価格を据え置いたため、販売量は増加し、特にひまわり油と混合油の販売が大きく伸びました(表4参照)。ナショナル・ブランドに対し、流通マークがよく健闘したということになります。
表4  油種別にみたショナル・ブランドと流通マークの販売(2002年)

  対前年比売上高
(%)
対前年比売上数量
(%)
売上高シェア
(%)
合 計 +4.5 -2.7 100.0
ひまわり油
うち レジュール(Lesieur)
   流通マーク
+3.1
-1.7
+16
-6.0
-9.7
+8.0
27.5
12.7
11.9
落花生油
うち レジュール
   流通マーク
-5.4
-5.9
-3.5
-5.4
-6.2
-3.5
5.1
3.1
1.6
混合油
うち イジオ4(Isio 4)
   流通マーク
+7.5
+3.2
+15.8
-0.4
-5.0
+14.6
12.6
10.0
2.0
揚げ物油
うち フリアル(Frial)
   流通マーク
+14.7
+17.9
+4.5
+8.9
+10.4
+6.2
3.2
2.5
0.7
とうもろこし油
うち エピドール(Epid'Or)
   流通マーク
-9.9
-7.5
-14.6
-16.9
-14.7
-18.8
0.6
0.5
0.2
オリーブ油 +4.4 -0.3 45.0
香り付きオリーブ油 +13.7 +8.0 3.0
ブドウ種油 +7.1 +5.3 1.8
出典:流通業者調査(製造業者からの情報に基づいて作成されたもの)
混合油から“健康油”へ、新規市場を創出し続けるレジュール

 フランスの植物油業界ナンバー1企業のレジュール社は、“イジオ4”という商品を開発し、業界に混合油というジャンルを導入した企業です。“イジオ4”は、ひまわり油、菜種油、ブドウ種油及びオレイソル(Oleisol、ひまわり油から抽出した油)を混合したもので、現在、家計で消費される植物油の10%を占めるようになりました。そのレジュール社は、2003年3月にビタミンDを多く含む植物油を発売すると発表しました。ビタミンDは骨の形成に寄与するビタミンで、フランスでは高齢者、妊婦、青年期の人々の摂取が不足しているとされています。

 レジュール社は、栄養素の研究に関して、国立農業研究所(INRA)、国立医薬品研究所(INSERM)、国立科学研究センター(CNRS)と30年以上も共に働いてきた実績があり、このような努力が新製品の開発に結びつきました。フランスの、“健康油”市場がこれからどのように発展するのか、興味が尽きないところです。
PREVMENUNEXT