4.天ぷらは健康食
江戸時代も毎日天ぷらを食べていたわけではありません。時々、特に肉体労働をする方々の栄養補給源として食べられました。私の料理の師匠はテレビで有名な料理研究家、故・土井勝さんですが、師匠からは「天ぷらは夏の料理」と教わりました。夏はどうしてもエネルギーを消耗しますが、それを補うには天ぷらがいちばんいいというのです。また、学生などと接していると、彼らは揚げ物がとても好きであると感じていますが、おいしい上に、同じカロリーを摂るのに安上がりだということもあるのではないかと思います。今の学生は経済にシビアですから。つまり時代に関わらず、庶民にとっての油は、カロリー源としてまず重要なものであるわけです。
カロリーだけでなく、油が身体の健やかさに欠かせないことを実感したできごとがあります。実は3ヶ月間、油ぬきの食事をしました。するとまず肌がかさかさになり、あか切れができ、それが割れて肉まで見えました。また、昔の「鼻たれ小僧」のように、水鼻が青鼻になりました。その話を聖マリアンナ医科大学病院の管理栄養士の中村汀次さんに申し上げると「ここの医師の方が同じ食生活をしてみて、あなたと同じ結果がでたという体験をされたそうです。だから油は欠かせないね」とおっしゃいました。何でも摂りすぎるのはよくありませんから、油だけを食べればいいというわけではもちろんありませんが、まったく食べないのは健康を損なうわけです。
先日、福島県郡山市でそば店に入ったとき、私の隣に白髪のご婦人が二人座っておられました。とてもお元気なご様子なので、失礼ですがとお歳を尋ねると80歳とおっしゃる。私は湯葉を乗せたぶっかけそばを食べていたのですが、お二人は天ぷらそばでした。「やっぱりおいしいね。これを食べるから元気なんだ」と話しておられました。お二人を見ていて、日本が長寿社会になった要因の一つに「油脂欠乏型」から「油脂満足型」に食事が変わったことがあげられるのとあらためて思いました。
これからの日本の食生活は、個人個人が責任を持って賢く食べることが重要だと思っています。美容と健康のためにも上手に油を活用していただきたいと思っています。 |
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