特集 加工油脂あれこれ
 植物油を原料とした加工油脂は、わたしたちの身のまわりにたくさんあります。
 代表的なものとして、今回は食品分野から「マーガリン」「マヨネーズ」、非食品分野から「印刷用インキ」をご紹介します。
 姿を変えて暮らしを支える植物油について、理解を深めていただければ幸いです。
1)消費者ニーズが新顔を生む、マーガリン市場

■ユーザーニーズで植物油使用が増加
 マーガリンは植物油の代表的な加工油脂です。一般に“動物性のバター”に対し“植物性のマーガリン”と認識されています。ところが、JASの規格にも「マーガリンの原料は植物油」とは定められていないのです。
 マーガリンは、19世紀末にフランスで発明されました。当時のヨーロッパで生活の必需品だったバターは、たいへん高価な食料。そこでナポレオン3世が安価な代用品を懸賞募集し、採用されたのが牛脂軟骨油75%、オリーブ油5%、牛乳20%でつくられたマーガリンでした。つまり、発明当初、マーガリンの主原料は動物油だったのです。
 では、なぜ「マーガリンは植物油」というのが一般通念になったかといえば、ふだん目にする家庭用マーガリンのほとんどが植物油を主原料としているからでしょう。その背景について、日本マーガリン工業会の馬場明専務理事は「家庭用マーガリンの原料が植物油中心になってきたのは、市場のニーズに合わせた結果 です。植物油には、おいしくてカラダにいいものというイメージが以前からありました。当業界でもそれに応えるべく開発をすすめるうちに、マーガリンといえば植物油というほど植物油の使用が多くなってきたのです」と分析しています。
 一方、パン生地やケーキの練り込みに使う業務用のマーガリンをみると、動物油や魚油を原料としているものもたくさんあります。「業務用のマーガリンというのは、より機能的であることが求められるので、原料にもいろいろなタイプの油が必要なのです」(同専務理事)。ケーキ用、デコレーションクリーム用など、用途によって“より伸びのいいもの”“より口どけのいいもの”と、求められる性質もさまざま。動物油、魚油、植物油など、それぞれの油の良いところをうまく組み合わせて使うことで、多様な機能を実現しているのが業務用マーガリンだというわけです。
 しかし、最近では、業務用のマーガリンでも植物油のウエイトが増加しています。また、マーガリンやその仲間であるファットスプレッド、ショートニングなどを含めた食用加工油脂全体でみても、原料に占める植物油のウエイトは増しています(図1)。消費者の志向が、食用加工油脂全体を動かしつつあるようです。

■続々と誕生する新メニュー
 消費者ニーズは、植物油の割合を増やしただけでなく、マーガリンの新しい仲間もどんどん誕生させています。パンに塗りやすいよう冷蔵してもソフトさを保てるもの、クリーミーな口当たりを追求したもの。また最近では、人気のオリーブ油を配合したものや、チョコレート味、ガーリック味などフレーバー付きマーガリンも登場してきました。
 バターの代用品として登場し、消費者ニーズに合わせてさまざまに進化するうちに、他にはないおいしさと健康の世界を広げてきたマーガリン。おそらく今後も、続々と新顔が登場していくのではないでしょうか。
(取材協力:日本マーガリン工業会 専務理事 馬場 明氏)
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