「食事摂取基準(2025年版)-国民健康・栄養調査を踏まえて-」
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所
栄養疫学・政策研究センター 国民健康・栄養調査研究室
松本 麻衣
国民健康・栄養調査は、国民の身体状況、栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的に実施されている。食事摂取基準の策定に関しては、参照体位、ならびに脂質、飽和脂肪酸、食物繊維等、いくつかの栄養素の基準値の設定に際し、国民健康・栄養調査から得られた身長・体重ならびに該当栄養素摂取量の値が、日本人の代表値として利用されている。
しかし、今般、国民健康・栄養調査への協力率は低下しており、特に、脂質、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸等において、国民健康・栄養調査の摂取量の値を参考とする妊婦・授乳婦の対象者数は限定的となっている。そこで、食事摂取基準(2025年版)では、国民健康・栄養調査データの活用に際し、妊娠可能年齢に該当する妊娠・授乳をしていない女性のデータに、母親の年齢階級別出生数を年齢階級別の国民健康・栄養調査に参加した女性数で除して重みを作成し、重みづけすることで中央値を算出することとした。 今後の食事摂取基準の改訂に際して、国民健康・栄養調査から算出される身長・体重ならびに該当栄養素摂取量の値の代表性を検証した上で活用することが必要であると共に、国民健康・栄養調査の実施に関しては、対象者によって協力しやすい簡便さを持ち合わせており、かつ摂取した栄養素の「量」を評価できる手法の検討も望まれる。
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