植物油に関する使用実態意識調査から

7.最近の話題について

 現段階において、環境認証制度に関しては、適格性をチェックする上位の客観性を持った国際認証組織の評価システム等は存在していない状況下で、我が国の最大のパーム輸出国であるマレーシアにおいて、政府自身が積極的に認証制度の重要性を踏まえ、認証制度を構築しているところです。日本植物油協会は、こうした事情について、今年2月、その実情について農場から輸出港に至る現地調査を実施したところです。
 マレーシア政府が立ち上げた認証制度は、MSPO(持続可能なパーム油のマレーシア基準)と名付けられています。これは、マレーシア政府により設置された機関(MPOCC = Malaysian Palm Oil Certification Control)によるパーム油認証システムであり、マレーシアパーム油の持続可能性を訴求することで国内市場における市場拡大と付加価値向上、およびブランド化を目指すとともに、信頼性の高い国際的に認められたパーム油の国家認証制度を確立し運営することを目標としています。
 MSPOの持続可能性要件は4つの項目からなり、国連の持続可能性開発目標や食料・農業ビジネス原則にも準拠しているところであり、国連の要件を精査する形で基準を確立しています。具体的には、一般原則、独立した小規模農家の一般原則、プランテーション及び組織化された小規模農家の一般原則、製油メーカーの一般原則。管理の役割要件、MSPOの実施のコミットメント、透明を高め公表していく必要などを基準としているところです。

 この基準策定にあたり、マレーシア政府は、とりわけ小規模農家への支援を重視しており、これらが持続可能性の認証を取るため、技術支援の提供、財政的ファンドの提供、教育、倉庫施設の提供し、認証にあたっては、認証監査者をおいて対応しています。なお、マレーシア政府は、基準策定にあたって、小規模農家に対して乗り越えられない高い壁をいきなり設置するのではなく、教育し、モニタリングし、支援し、底上げを図って、ハードルを乗り越えられるようにしているところです。

 2013年11月に立ち上げられた同基準は、2015年1月に正式に施行され、パーム油生産の管理を既存の多くの国家法令に準拠させる内容となっています。現時点では強制的なものではない(生産者のMSPOへの参加は任意)ものの、マレーシア政府方針はマレーシアのパーム油農園、ミルをMSPOに強制加入させる意向を示しているところです(現在は自主的加入ベースですが、これを強制加入に切り替え、2019年12月までに加入を完了させる予定です)。

 同基準の監督機関は、マレーシアパーム油庁(MPOB)で、この省庁は、マレーシアのパーム産業の振興をサポートする機関です。マレーシア政府は、民間による認証制度では、中小の農園はコストの高まり等に対応できないといった課題があると認識しており、マレーシアにおけるパーム油に責任ある政府として、その課題解決のため、MSPOを導入したとしています。このように、MSPOはマレーシア政府が包括的に認証する制度であり、マレーシア政府は、インドネシア政府とも連携し制度のグローバルスタンダード化を目指すとしているところです。

 MPOC(マレーシアパーム油認証協議会)のCEOであるカルヤナ・サンドラム博士は、我々の調査の際、「環境認証に関して言えば、最初に取り組んだRSPOが現段階で、西洋を中心に大きな役割を果たしていることは確かだ。しかし、今後とも選択がRSPOのみということでいいのだろうか。MSPO制度は、生まれて間もないが、現段階でRSPO基準に近づいてきており、2019年までに法制化し、RSPO基準の外にいる小規模農家を包括する体系的な制度となる。今後、MSPOは、消費国に選択される存在となりたいと考えている。そのためには、今後、各種環境団体をはじめ、各国政府の理解を求めるべく、さらに一層の努力をするつもりである」との見解を示しています。

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