どこまで伸びる、中国の植物油需要

4.台湾の植物油事情

 台湾の人口は約2,326万人(2011年6月)、2011年の植物油の一人1年当たり消費量(工業用も含めた総供給量を人口で除したもの)は28kgで、同じ基準で比較する日本の一人1年当たり消費量が19kgであることと比較すると、会議に参加した3地域の中で、一人当たりでは最も多くの植物油を消費する地域となっています。

(1)国内搾油は大豆が中心

 台湾の製油事情については、植物油INFORMATION第52号(2007年3月9日)でも紹介しましたが、域内で搾油されている油糧種子は大豆、落花生、ごまの3種類だけであり、その他の植物油の供給はすべて輸入に依存しています。このうち、落花生とごまの搾油が小規模な工場で行われているのに対し、大豆搾油は規模の大きい工場で行われているのが特徴です。現在、大豆搾油を行っているのは4企業で、その供給シェアは、図4のとおりとなっています。
 このうち、大統益股份有限公司(略称TTET)と中聯油脂股份有限公司(通称、CUOC)は、複数の企業の共同出資により発足した企業で、この2企業の工場で大豆油が生産され、出資企業がそれぞれのブランドとして製品を販売するというユニークな方法の事業が実施されています。


【 図4 台湾の大豆搾油企業と市場シェア 】

図1 中国の植物油需要量(食用)の推移
資料:台湾区植物油製煉工業同業公會提示資料

(2)安定した大豆の搾油

 台湾には域内の大豆生産はなく、搾油原料の大豆のすべてを海外供給国に依存しています。この点で、日本と全く同じ立場に置かれています。図4で示した4社の年間搾油能力は300万トンで、現実の搾油量は180~200万トンの間で安定して推移しています。年間の大豆輸入量は230〜250万トンですから、製油原料以外の食品用として50万トン程度の需要があることとなります。
  台湾では、1990年代半ばまで230〜240万トンの大豆を搾油していました、現在では200万トン前後に落ち込みました。これは、1997年に口蹄疫の蔓延という厳しい試練に遭遇したことに起因しています。それまで、豚肉は台湾の主要な輸出品目で、日本もハム、ソーセージなどの原料として多くの輸入をしていました。しかし、口蹄疫の発生により豚肉の輸出ができなくなり、畜産業が後退し、飼料原材料としての大豆ミールの需要が激減することとなりました。このため、大豆の搾油量が一気に減少することとなりました(植物油INFORMATION第52号参照)。口蹄疫は、現在も完全に駆逐されていないため、畜産物の輸出は制限され、したがって畜産業も十分に回復しないまま今日に至っています。したがって、大豆搾油量が安定していても、台湾の製油業界にとっては決して満足できるものではないのが実情です。


【 図5 台湾の大豆輸入量の推移 】
(単位:百万トン)
図4 台湾の大豆搾油企業と市場シェア
資料:図4に同じ

(3)輸入製品との競合

 口蹄疫の発生に伴う大豆搾油量の減少は、大豆ミールと大豆油の供給量の減少をもたらしたことから、供給不足量をそれぞれの輸入に依存することとなり、これらとの競争が台湾の製油業界の課題となりました。それらは、台湾の製油業界に、どのような影響をもたらしているのでしょうか。

① 輸入大豆ミールとの競合の克服

 口蹄疫発生後、数百万頭の豚が殺処分され飼料の需要が一時的に落込んだのち、畜産業の回復に伴って大豆ミールへの需要が徐々に増加に転じましたが、それに対する大豆ミールの供給のため、安価な輸入ミールが増加する傾向が見られました。
 輸入量の増加は、大豆搾油量の更なる減少を意味します。このため、台湾の大豆搾油業界は、輸入大豆ミールに打ち勝つための努力を重ねました。業界として最も重要な対応は、常に鮮度が高く、栄養価値に優れた大豆ミールを供給し、そのことを飼料業界に理解させることでした。この努力は功を奏し、輸入ミールの数量は徐々に減少しました。大豆ミールの品質だけではなく、飼料業界が輸入ミールを鮮度の良い状態のまま保管できる設備を持たないことと、積み地において政府による残留農薬のチェックがトラックごとに行われる煩雑さも、輸入ミールを排除する役割を果たしたようです。
 しかし、大豆ミールの需要に影響を及ぼすもう一つの問題が浮上しています。海外から冷凍の豚肉・鶏肉の輸入が増え、2012年ではこれらの輸入数量は16万トン弱に達し、なお、増勢を見せています。これがさらに増加することは、域内の畜産業を後退させ、大豆ミールの飼料需要を減少させることに結びつくため、大豆搾油業にとって大きい制約事項となります。


【 図6 台湾の大豆ミール輸入量の推移 】
(単位:トン)
図5 台湾の大豆ミール輸入量の推移
資料:図3に同じ

② パーム油の台頭

 輸入大豆ミールを抑制できたことは大豆搾油量を増加させ、したがって大豆油の供給量も増加しました。このため、一時的に増加していた大豆油の輸入は減少に転じ、2012年にはほぼ皆無となりました。しかし、これに代ってパーム油輸入の増加が、台湾の製油業界を悩ませています。価格が相対的に安価であることが、油脂加工業界や加工食品業界に受け入れられ、この10年間に着実に増加を続けています。2001年の輸入量は9万トン弱でしたが、2012年には16万トンとなり、なお、増加するものと見込まれています。このほか、菜種油とひまわり油の輸入量合計が約4万トンですから、20万トンの油が輸入されていることとなります。域内での大豆油生産量が約40万トンであり、これからも輸入油との競合が台湾の製油業界の大きい課題となるようです。

(4)コンテナによる大豆輸入

 台湾では、他の国には見られない大豆の輸送が行われています。大豆などのコモデティーと称される貨物は、パナマックスなど大型の運搬船でバルク輸送(バラ積み)されるのが一般的ですが、台湾ではコンテナ輸送の比率が高いという特徴がみられます。
 コンテナは、日本でも食品用大豆の輸送に一般的に用いられていますが、台湾の場合には搾油用大豆もコンテナで輸送されていることが特徴です。
 台湾は、アメリカ向け衣料品・雑貨の供給国で、その輸送はコンテナで行われますが、アメリカから積んでくる雑貨などが少なく、多くのコンテナが空の状態で台湾まで戻ってくることとなります。このため、アメリカから帰るコンテナを格安の料金で提供されることが一般的で、大型船によるバルク輸送よりも輸送費負担が大幅に軽減されるという特典があります。この特典を製油業界が積極的に利用しているため、2012年では大豆の輸入総量の37%がコンテナで輸送されました。2007年~2008年にはバルク輸送費の割高感に加え、大豆価格が高騰したため少しでも原料取得コストを抑えようとする動きが強まり、総輸入量の75%以上がコンテナで輸送されました。
  コンテナ輸送が広く行われることには、もう一つの理由があります。台湾の搾油工場はほとんどが内陸部に位置しています。中国との軍事的緊張が続いた時期に、西海岸部に重要な工場などの建設することが認められていませんでした。現在では、1998年に中聯の搾油工場が西海岸に建設されましたが、他の搾油企業は内陸部に立地しています。これら内陸部の搾油工場には、港でコンテナを受け、そのまま鉄道で工場まで運搬することが合理的となります。
 コンテナの利用については、次のような興味深い一言がありました。

「コンテナ船の総容量はパナマックスより大きいので、満載して大豆を運べば、パナマックスより多くの数量を輸送することだって可能になる。」。

現実的にこのようなことが行われるとは考えがたいのですが、輸入製品との競合などの問題を抱えた台湾の製油業界が、コスト削減に努力している姿が浮かんできます。


【 図7 コンテナによる大豆の輸送割合の推移 】
(単位:万トン)
図5 台湾の大豆ミール輸入量の推移

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