菜種生産の限界に挑むカナダ

2.会議のポイント

日本でも、ASA日本事務所の認証に基づいてこのシールを貼付した印刷物(特に、企業の広報パンフレットなど)が発行されてきました。ASA日本事務所は、当初、アメリカでの動きに合わせてソイシール貼付による大豆油インキの普及を推進する活動に幕を閉じる予定でした。しかし、ソイシールの使用を継続する企業があったことから、積極的な普及活動はしないものの認証を付与する事業をその後も継続しましたが、2008年9月をもって更新を行わないこととなりました。
2008年は、大豆のみならず国際市場において多くの農産物の価格が高騰した年であり、価格高騰が大豆油インキ普及運動の終焉に影響を及ぼすこととなりました。

大豆油インキの認証を得て大豆油インキの普及に尽力していた印刷インキ業界は、上記のASAの決定により転機を迎えます。印刷インキを製造する企業で構成する「印刷インキ工業連合会」は、環境負荷を低減するとはいえ、食料需給のひっ迫が続くと考えられる情勢下で、食用油として重要な大豆油を印刷インキ原料として使用を推進することは適切ではないとの結論に達しました。しかし、一方では環境負荷低減という社会的要請に応えることも業界の責務であると考えられたのです。
同連合会は、業界の総意を次のように結論付けました。

  • ①揮発性有機化合物(VOC)の発生抑制に寄与するのは、大豆油だけではなくすべての植物油に共通することであること。
  • ② 今後の世界の食料需給を考慮すれば、食用需要との競合を避けることが大切であり、できるだけ非食用の植物油を使用することが大切であること。

この考え方に基づいて、同連合会はアメリカ大豆協会の大豆油使用を示すシールに替り、すべての植物油とそれを食用として利用された後に廃棄される油(廃食用油)の利用を推進することを決定しました。

図6 印刷インキ工業連合会の植物油インキロゴ

資料:印刷インキ工業連合会提供

同連合会は、用途ごとに植物油を一定割合以上使用して製造される印刷インキの基準を設定し、その基準に準拠して製造される印刷インキを認証し、ロゴマークを貼付することとして、改めて「植物油インキ」を普及推進する運動を2008年12月から開始しました。
もし、図6のマークがプリントされた印刷物をご覧になったら、それは一定割合以上の植物油を原料として使用したインキで印刷されたものであることを表しているのです。

印刷インキの主要成分であるビヒクルは、グーテンベルクの開発以来植物油が主要な役割を果たしてきました。石油化学の発達にともなって植物油に代替しうる樹脂が開発されましたが、植物油(特に、乾性油)が有する機能が印刷インキにとって重要であることには変わりがありません。
印刷インキ工業連合会の認証を受けた植物油インキは着実に増加し、最近では、約14万トンの平版印刷用のインキが製造されていますが、その90%を占めるに至っています(図7参照)。そして、使用基準には満たないものの、それ以外の印刷インキにも植物油が使用されています。
植物油は食用だけでなく、こんなところで皆様の近くで活躍しています。

図7 平版インキの製造数量内訳
(2011年、製造総量 138,864トン)


資料:印刷インキ工業連合会提供
注:UVインキとは、印刷後紫外線を当てることにより瞬時に乾燥する印刷インキ(植物油使用のものを含む)

この記事の作成に当たっては、「印刷インキ工業連合会」、独立行政法人「国立印刷局」及び「アメリカ大豆輸出協会日本事務所」のご協力をいただきました。

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