マヨネーズ(Mayonnaise)はフランス語から派生した言葉ですが、多くの食品の例に漏れず、マヨネーズの語源には地名説、人名説さまざまな説が入り乱れています。
起源(発祥の地)にも多くの説があり、よく知られているのはスペイン領のマヨルカ(マジョルカ)島、メノルカ島のマオンの2つで、“マヨルカのソースだからマヨネーズ”、“マオンのソースだからマヨネーズ”と言われると、いずれも“なるほど”という感じがしますね。ここではキユーピー株式会社等の資料から有力説とされる「メノルカ島のマオン説」をご紹介しましょう。
メノルカ島はスペイン本土の東方100km沖合、地中海に浮かぶ島です。18世紀の半ば、イギリスと7年戦争を繰り広げたフランス軍は、当時イギリス海軍が拠点の一つとしていたメノルカ島占拠を目指し攻撃を仕掛けます。その指揮を執った将軍が、マヨネーズ起源説の立役者リシュリュー公爵でした。膠着状態の続く戦いの中、リシュリュー公爵はこの島にある町マオンを訪れ、小さな料理屋でひとときのくつろぎをと食事を求めます。美食の国フランスの公爵に差し上げる料理など思い浮かばぬ店主は、塩、ビネガー、オリーブオイル等で作る定番のソースに、島の名物である卵を加えて攪拌したソースを作ります。その味をいたくお気に入りになったリシュリュー公爵は、ソースの名称を尋ねます。即席のソースに名などあるはずもなく、店主は「マオンのソース」と答えます。リシュリュー公爵は、そのレシピをフランスに持ち帰り、その子息がマヨネーズと命名し、フランス全土に広めると伝承は続きます(カベルナリア吉田著「マヨネーズ大全」より)。
【 図1 メノルカ島地図 】
小さな料理屋の店主が、なぜ卵を加えることを思いつくのか、卵でなくともよいのではないかなど疑問は尽きません。また戦争のさなか、指揮者である将軍がのんきに食事を愉しむことができるのかという疑問も湧いてきますね。
しかし、伝承に「何?ナニ?」を求めるのはいささかお門違いで、いかにも信憑性があり、著名なシェフではなく名もない料理人の店主が作り出したとする説の深みを、「良くできた話だ」と愉しみつつ味わうのが“粋人”のわきまえかもしれません。
ともあれ、リシュリュー公爵を起点に、スペインの小島生まれのソースはフランスの貴族社会からヨーロッパ、そして新大陸アメリカへと広がっていきます。
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