なたねの安定供給に黄信号? ~ バイオディーゼル需要の増加がもたらす波紋 ~
バイオディーゼル需要拡大がもたらす懸念

 EUを中心とするバイオディーゼル需要は、環境負荷の軽減という長期的課題が背景にありますが、その急速な拡大はいうまでもなく石油価格の異常な高騰に基づいており、世界の植物油業界は新たなビジネス機会の拡大としてとらえ、製造能力を拡大する動きが急ピッチで進んでいます。

 先述のVon Wissel氏は、今後のEUにおける食用植物油の位置づけを次のように語りました。

 「ヨーロッパの植物油市場は食用の需給が先導するのではなく、バイオディーゼルの需給に影響される方向に進むだろう。そして、植物油の価格水準は、燃料の価格によって決定されることになる。食品産業界は、食用植物油についてバルクで大量に取り扱うビジネスから、特定の機能や目的を有する植物油を取り扱わざるを得なくなるだろう。」

 すなわち、ヨーロッパにおいて植物油の第一の目的は燃料であり、食用が二の次に置かれることを示唆しています。そのために、更に大量の油糧種子と植物油の輸入を行うことを述べています。

 しかし、地球環境への負荷の軽減が重要な課題であることを否定するものではありませんが、この結果、食用向け植物油の供給量が減少し、価格が高騰することは、飢餓に苦しむ開発途上国の食料・栄養問題に対して大きい問題を提起しています。

 また、確かにEUでは燃料使用によって環境負荷を計算上は軽減しているかもしれませんが、これを供給する生産国において、油糧種子生産量拡大のため耕地開発が進み、自然破壊につながっていることや大量輸送による石油使用量の増加などを考慮すれば、プラス・マイナスいずれになるのか判断が困難なところです。

 今回の日加なたね予備協議は、長年にわたり友好関係を築き、安定した供給国であったカナダでさえ、今後の安定供給を確信できるものではないという厳しい現実を私たちに突きつけるものとなりました。

PREVMENU