世界の主要な国には、製油業界を代表する業界団体が結成されています。これらの団体が集まって国際搾油業者協会(International Association of Seed Crushers、通称IASC)という国際団体を構成しています。 現在の会員数は32カ国で、このほかに国際的な大企業が賛助会員になっています。
IASCは、18カ月ごとに世界大会を開催しています。この大会には、IASCの会員だけではなく、およそ植物油に関連するあらゆる業界代表が参加します。日本では、1998年10月に私ども日本植物油協会が事務局となって第70回大会を開催し、世界各国から500名余りの参加を得ました。
第74回大会は、去る1月18~20日にインドのムンバイ(旧ボンベイ)市で開催され、300人余りの参加者を数えました。
この席で、事務局を努めたインドから農業大臣が参加され、伸びゆくインドの農業と製油産業を高らかに紹介されるとともに、農業の一層の発展のため遺伝子組換え技術など新しいテクノロジーを駆使していくとの意向が示されました。
油糧種子と植物油の需給を巡る議論では、中国、インドなどの需要の急速な拡大に対して、世界の製油業を二分する大豆及びパーム油の生産国から、これらの需要に応えて十分に供給していく力を有していることが力強く述べられました。このなかで、急速に大豆・大豆油の生産が拡大している南米、特にブラジルが、植物油の国際貿易に対する発言力を高めている実情が示されました。
今回の大会を特徴づけたのは、“Sustainability"(持続的な成長)の議論でした。この議論の発端は、マレーシア、インドネシアにおけるパーム農場の拡大が、熱帯雨林の減少をもたらしているとの認識にありました。世界野生基金(WWF)が呼びかけ、NGO、パーム生産者、国際製油資本などの参加を得て"Sustainability"を議論するラウンドテーブルが開催されました。このラウンドテーブルは、これまでパームを事例に検討を進めてきましたが、更に議論の対象を“南米における大豆生産の拡大とアマゾン熱帯雨林の保護”に広げることが予定されています。パームの事例については、近く報告書がとりまとめられるとのことで、私たちも注目しています。
このような環境問題の議論に対し、農業生産を基盤にして経済発展を推進する発展途上国からは、“このような議論は、先進国のわがままである。自分たちの自己満足のため、発展途上国の経済発展努力に水を差す”という反論があります。開発と環境という問題が、植物油にも及んできたわけですが、原料を有していないわが国にとって、どのような視点を持つべきか検討が求められます。
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