2.エル・ニーニョ現象が押し上げる食料の価格

 エル・ニーニョ現象が発生した年は、ワインの価格が高くなるといわれます。では、油脂の原料はどうでしょうか。エル・ニーニョ現象にもっとも敏感に反応するのは魚油です。魚油の主原料となるアンチョビ(カタクチイワシ)の主な漁場はペルー沖ですが、エル・ニーニョ現象が発生した年には漁獲量が極端に減少し、魚油の価格が高騰するという不安を常に抱えています。

 植物油の原料では、エル・ニーニョ現象が発生した1993年夏に、米国は史上最悪といわれる大雨と洪水に襲われ、大豆の生産が打撃を受けるという経験をしています。

 最近では、2002年春から今年春まで約1年間続いたエル・ニーニョ現象が、カナダとオーストラリアに歴史的な干ばつをもたらしました。この2カ国では、菜種など油糧種子の生産が半減するという大変な打撃を受け、菜種の国際需給は一挙にタイトになり、価格が前年より50%近く上昇しました。米国も干ばつに襲われたのですが、幸いにも大豆への影響は比較的軽微に止まりました。しかし、小麦は30年前の水準にまで生産量が減少するという大きな打撃を受けました。当然、小麦の国際価格は急騰しました。

 海外に原料の多くを依存している食品産業にとっては大ピンチ、私たち植物油製造業も例外ではありません。
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