10大ニュースに見る2001年度の製油業界
 (社)日本植物油協会では、毎年、その年間に生じた主な出来事について、油脂に関連する業界紙記者の皆様に製油業界10大ニュースを選定していただいております。2001年の10大ニュースは、次のように選定されました。言うまでもありませんが、凝縮されたニュースヘッドはその年ごとの業界動向を端的に表したものです。主な話題に若干の解説を加え、2001年の製油業界の状況をご報告いたします。
 10大ニュースの多くは相互に関連したものになっています。この中では、2位、3位、4位、7位にランクされたニュースを組み合わせ、1位のニュースにつなぐと、2001年の製油業界の姿が浮かんできます。
不況、デフレの進行の中で、市況が厳しいのは各産業界に共通していますが、製油業界は、原材料が農産物で、供給のほぼすべてを海外に依存していることから、一層厳しい状況に直面しました。
 日本における植物油のうち「なたね油」の需要が最も多く、総需要量の約4割を占め、次いで「大豆油」が3割を占めています。しかし、2001年の世界の油糧種子生産は、大豆は豊作が続き、国際市場が軟調であったのに対し、なたねはカナダ産の大幅減産により国際市場は堅調に転じました。これに、国際為替市場における円安の進行が加わり、日本で需要の強いなたねが、価格の高騰と品薄によって入手が困難になるという状況に直面しました。
 更に、我が国初の“牛海綿状脳症(BSE)”(いわゆる狂牛病)の発生は、製油業にも大きい混乱をもたらしました。これまで家畜飼料のたんぱく質素材として広く利用されていた肉骨粉の使用が制限されたため、代替たんぱく質素材である大豆ミールの需要が一気に高まり、製油業界は大豆ミール供給拡大を要請されました。
 これらの結果、デフレ進行による国内植物油価格が低迷しているにもかかわらず主要原料の購入価格が上昇し、なたね油需要が強いにもかかわらずなたね入手が困難となり、BSEの発生が大豆ミール供給の拡大を促し、大豆圧搾量の増加をもたらした、という、いわば三重の“ねじれ現象”が製油業界に生じました。
 これらの克服が、2001年における製油業界の大きい課題であったことを、2、3、4、7位にランクされたニュースが示しています。
 1位にランクされたニュースは、製油業界にとって原材料輸入の自由化(昭和38年)以来の大きい話題です。しかし、その背景には2001年に生じたような問題に的確に対処するために、企業構造をより柔軟なものにしておかねばならないという課題があります。 
 また、多くの人口問題研究者が、2010年前後から日本の人口が減少に転じ、高齢化が急速に進むと見通しています。このことは、近い将来に日本の食品市場が縮小する可能性を示していますが、このような事態にも対処できるよう植物油の供給構造を改善して行かねばなりません。無論、現在進行中のWTO交渉後を見据えた国際競争への備えは緊急の課題となっています。これら様々な要素を各企業が受け止め、それぞれの戦略の中で経営統合を進めようとするものです。
 以上に述べましたことを背景に、それぞれのニュースをお読みいただけば、10大ニュースが示した2001年の製油業界の動向がご理解いただけるのではないでしょうか。
 ところで、2002年は円安の動きが加速されて幕が開けました。気がかりな世界のなたね生産は、拡大する要素が見あたらない状況です。そして、国内景気が好転するという見通しもありません。日本の植物油製造業は2001年に経験した以上の困難に直面しています。私どもは、この困難を克服し、本年末にはもっと明るい10大ニュースが選定されることを期待しながら、植物油の安定供給に努めてまいります。

■2001年製油業界10大ニュース
第1位 大手製油メーカーの経営統合計画相次ぐ
第2位 油とミールの需要のねじれ現象
第3位 原料なたね相場高に伴う大豆シフト進行
第4位 製油各社3月末決算久々の好調も、9月中間決算は大幅下方修正
第5位 WTO包括交渉開始、中国のWTO加盟が今後の交渉に影響か
第6位 健康志向の植物油新商品花盛り
第7位 デフレ進行を狂牛病・アメリカ景気後退が追い打ち、植物油需要停滞
第8位 植物油の危険物規制を緩和する消防法改正
第9位 食品衛生法及びJAS法の遺伝子組み換え食品の表示制度施行
第10位 東京穀物商品取引所が大豆ミールの試験上場を開始
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