植物油に関する使用実態意識調査から

5.健康志向油について

 世界には、パーム油に限らず、それぞれの商品特性や歴史を踏まえた多様な認証制度があります。こうした認証制度がどの程度、本来の目的を果たしているかなど、その判定は難しく、その意味では、本来、国際的にみて公正な客観的な第三者により判定されることが必要です。しかし現段階において、環境認証制度に関しては、適格性をチェックする上位の客観性を持った国際認証組織の評価システム等は存在していない現状にあるのも事実です。
 次善の策として、認証基準のレベルや監査につき、有力NGO等から評価されることをもってその客観性の担保とされる場合がありますが、そうしたNGOが例えば、西欧諸国系のNGOであった場合、アジアの現実をしっかり把握しているのかといった課題も存在します。特にパーム油の生産環境や労働環境を見る場合、アジア特有の労働・環境条件をしっかり把握する必要があります。また、とりわけ資金力、マンパワーの点で劣る小規模農家・小規模農園(スモールホルダー)はその環境維持対応とは関係なく、大規模農園会社に比べて認証取得が容易でないことなどの多くの課題も有している現状にも目を向けていく必要もあります。

 パーム油の認証を巡っては、これまで、主としてグローバルにサプライチェーンを抱える西洋の企業を中心に、環境対応等に関する批判リスクの回避が大きな誘因となってきた経緯があります。こうした課題を乗り越えるにあたって、BtoC中心でグローバルにサプライチェーンを抱える企業にとっては、認証に必要な経費を負担することも、ある意味、リスクに見合ったものでした。しかし、我が国の場合、現段階でパーム油の諸問題に対する社会的な認知が低く、その多くが国内市場中心の多くの食品企業にとって、支払うべき経費を価格転嫁しうる環境条件におかれているとは言い難いところもあります。
 したがって、なんらかの認証制度を推奨する場合には、行政と民間が一体となって認証の意義や役割の啓もう普及を推進する一方で、認証システムの基準等によっては、大幅なコストアップとなる場合も想定されることからすれば、末端価格まで適正に転嫁する行政指導なども併せ期待されるところです。

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