一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

com_img_logo2_description

協会組織概要

新春ご挨拶


平成31年元旦
日本植物油協会会長
八馬 史尚

平成31年の幕開けに当たって(年頭所感)―食の基幹産業としての発展・充実の年―

 明けましておめでとうございます。皆様には、平成31年の幕開けをお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。新しき年が皆様にとって希望に満ちたものでありますことを、心よりご祈念申し上げます。

 昨年の世界経済を顧みますと、先進国では、日米欧とも緩やかに持ち直し、新興国も、金融・財政政策の効果や堅調なインフラ需要等を背景に、グローバルな貿易取引が活発化し、各国での金融緩和姿勢を受けて、国際的なマネーフローも安定、総じて回復傾向が持続したところに、米国による対中貿易制限措置の発動や英国のEU離脱など、世界経済を大きく揺さぶる動きが継続し、IMF(国際通貨基金)も下振れリスクが拡大しているとして世界経済見通しを次第に低下させてきたところです。

 我が国においては金融緩和を中軸とした経済活性化対策が継続していますが、昨年は、台風、豪雨、地震など自然災害が多発し、GDP自体も増減を繰り返す不安定な動きとなりました。また、家計部門の動きも弱く、消費者にも景気回復の実感は乏しく、実質賃金は低迷、年金、医療など社会保障等に関する将来不安が解消されていないことなどもあり、生活防衛意識が強く働く状況が継続しています。さらに、日銀の物価目標の達成の展望も見込めないなど、未だ、デフレ脱却局面には至らない状況にあり、今後の行方には依然不透明感が漂っております。

 こうした状況下、食品市場においては、人口の減少と高齢化社会の進行という構造的問題の影響が徐々に顕在化してきています。消費者の節約志向は一段と強まり、小売業態の過当競争が常態化、納入価格引き下げの強い圧力が継続しているところです。

 とりわけ、植物油産業を取り巻く環境につきましては、マスコミ等を通じて一部の健康油に焦点が当たるなどの動きが見られましたが、市場の成熟化が進展する中、消費者の節約志向や低価格志向が継続しており、中食、外食の伸びの一方で、全体としては、厳しい局面となっております。

 私ども植物油業界は、必要な油脂原料を海外の限定された国に依存しております 。国際市場において、多くの油脂原料の増産が見通されているにも関わらず、 新興経済国の食料需要の拡大に伴う油脂需要は極めて旺盛に推移したところです。こうした状況下、米中貿易摩擦に伴う貿易環境の激変もあり、国際市況も一時の高値から低下し、ミール等の販売環境も一定の好転を見せたものの、国内においては、エネルギー・物流等の各種コスト高に直面する状況が継続もしたところです。

 本年は、搾油等を巡る情勢の一段の悪化が想定されるところですが、日本植物油協会会員各社は、新たな商品価値の実現に向け消費マインドの変化等に見合った積極的な新製品開発等に努める一方で、各社の事情に応じ、コスト要因に見合った適正な価格転嫁と植物油の価値を正当に評価いただく国内市場の構築が不可欠であるとの認識を新たにし、ますます粘り強い挑戦が必要となっていると強く感じております。

 植物油を巡っては、国際協定等の分野においても厳しい局面が継続しています。昨年3月には、包括的および先進的なTPPとされる米国抜きの「CPTPP(包括的および先進的環太平洋連携協定)」が締結されたのを受け、政府は、本協定を通常国会で成立させ、国内の批准手続きを終え、その後、関係各国における必要数の参加表明がなされた結果、2018年12月30日発効が確定となったところです。また、日欧EPA(2019年2月発効予定)の批准決議が進むなど、多様な形での自由貿易協定が進展しています。

 一方、米国は、昨年3月、国内の鉄鋼産業等の衰退が国家の安全保障上の脅威になるとして、1982年(昭和57年)以来、36年ぶりとなる通商拡大法232条に基づく輸入制限措置を発動しました。ここでは、カナダ、豪州、さらにEUなどが輸入制限の対象から除外されましたが、日本は除外されず、米国は、2国間の自由貿易協定(EPA)の締結に向けた協議の意向を示してきていたところです。こうした状況下、政府が物品貿易協定(TAG)と名付けた日米貿易交渉が今年1月にも始まることが予定されており、今後とも協議の進展を重大な関心を持って注視していく必要があると考えています。

 植物油業界としては、こうした一連の国際協定がどのような決着を迎えるとしても、高度に洗練され、健康、安全・安心志向を高めつつある日本の消費者ニーズや世界の動向を踏まえ、植物油を「核」とした商品開発の強化や高度で繊細な技術・販売力を生かした事業領域の拡大、さらなるコスト削減と生産性向上等の模索も含め、業界全体としていかなる変化にも柔軟に対応できるシステムへの転換と高付加価値を確保しうる産業競争力の強化等にまい進していく必要があると考えています。

 植物油業界を巡っては、こうした経済環境ばかりでなく、今後とも色々な変化が見通されるところです。

 まず、昨年は、今後の食品の表示のあり方に極めて大きな役割を果たす原料原産地表示が見直されたところです。原料原産地表示については、政府が「全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める」との基本方針を示したことから、検討が開始されたところですが、国際規格であるコーデックス(Codex)において義務表示すべき項目に入っておらず、正確なトレースを可能とする国際的なインフラが存在しないことから、次善の方策として、「又は表示」や国産・外国産といった「大括り表示」などの方式が提案され、最終決定に至ったところです。当協会としては、これに先立つ表示基準策定の段階で、植物油の原料とその加工の特性および「食用植物油」とする原料名を確保していた経緯を踏まえ、消費者庁等と交渉し、消費者、購入者の皆様により適切な表示方法となるべく検討した結果、精製加工する植物油については、原則中間加工原材料の製造地である「国内製造」とする方向で合意が成立したところであります。この改正案については、平成34年3月末までの経過措置期間内の円滑な対応を進めていく所存です。

 また、昨年は、植物油の商品販売戦略に大きな影響を与える、遺伝子組換え表示について方向性が提示されました。これは、国会の「TPP等に関する特別委員会」において、すべての食品を義務表示としているEUの制度などを評価する形で検討が始まったものです。当協会としては、表示制度は、科学的判断のもとに、表示の信頼性や事後検証性、実行可能性や国際的整合性等の観点からなされるべきものであり、また、その対象品目は、表示対象商品において、組み換えられたDNA等が検出できるものを原則とすべきであるとの意見を提出したところですが、最終的には、こうした当協会の主張をベースとした報告がなされ、その後、政府による説明会等が実施されたところです。今後、米国農務省による遺伝子組換え食品に対する表示案が示される予定等もあり、我が国業界として無用な混乱が生じないよう適切なフォローをしていく所存です。

 その他、個別の油種を巡っては、まず、オリーブオイルにつきましては、IOC(国際オリーブ協会)との連携を強化し、IOC規格(又はCodex規格)をベースとした我が国におけるオリーブオイルの定義・規格の検討に入っているところですが、本年度は、海外の既存IOC認定機関の分析結果の活用を検討、その後、日本国内でもIOC認定ラボの設立を行うなど、分析可能な環境を整備する方向で進めていく所存です。また、こうした対応と並行して、オリーブオイルに関する日本国内におけるIOC基準による品質規格の設立に向けた活動について、JAS規格の検討を含め消費者庁、公正取引委員会、農林水産省と調整を実施していく所存です。

 また、パーム油につきましては、2020年に開催予定のオリンピックに向けて持続可能な調達を図るための調達コードの検討が進められてきたところですが、「持続可能な調達ワーキンググループ」において、当協会の主張した消費者、購入者のために出来るだけ幅広い選択を可能とするべきとの意見が採用され、RSPO、MSPO、ISPOが平等な形で、推奨すべき認証制度として、公的機関による決定としては世界で初めて表記されたところです。今後、こうした認証制度が日本において、円滑に実効可能なシステムとなるよう調整していく必要があると考えています。

 さらに、温暖化等環境対応が、CSR対応の面からも重要な課題となっています。この関係では、国際的には、COP21で「パリ協定」が採択され、これを受け我が国は、「地球温暖化対策計画」を閣議決定したところですが、その後、米国の協定離脱宣言がなされました。我が国においては、原子力の再稼働などの条件整備が整わず、更なる削減見通しは不透明な状況となっているところではありますが、業界としては、政府の地球温暖化対策傾向を踏まえて製油産業環境自主行動計画の2030年度目標の見直しを進めるなど、今後とも引続き積極的に対応していく所存でございます。
 環境対応では、その他、業界としてプラスチック資源循環に資する自主的取組としてプラスチック資源循環アクション宣言を表明したところです。今後ともこの分野の対応を強化する所存ですが、一方で、容器包装リサイクル法に基づくプラスチック容器包装の再商品化についても、社会的コスト全体の低減という原点に戻って、制度の改善の模索をしていく必要があると考えています。

 なお、昨年来、政府は、「未来投資戦略」に基づき、生産性を劇的に押し上げるイノベーションを実現し、世界に胎動する「生産性革命」の実現に全力をあげて取り組んでいるところです。製油産業は、我が国フードシステムの基幹産業であり、私どもも率先して、生産性革命に向けた具体的努力が求められていると考えます。日本植物油協会として、会員相互がフェアな競争を行いつつ、一致団結して業界全体の生産性向上方策の検討を行うこととしています。

 改めて申すまでもなく植物油はすべての年齢層にとって重要な栄養源であり、健康の維持、身体機能の適正化に不可欠な食品であります。昨今の健康油ブームで、改めて植物油の健康効果が見直されてきていますが、新しい価値の提供による植物油市場の活性化や植物油をベースとした新たな成長基盤構築に向け、業界全体で努力していくことがますます重要になってきています。今後、高齢化の進展の中で、むしろ植物油の価値は益々見直されていくものと思います。こうした状況下、私ども植物油脂産業界が一致して国民の命と健康を守る植物油脂を安全・安心、安定的に供給するという強い使命感と責任感を以って、その役割を果たす決意を内外に示すことが重要になるかと存じます。

 本年は、私どもの業界にとって、より大きな試練の年になるものと思われますが、こうした時こそ共通する課題に対して真摯に対応し、食品産業全体の繁栄を目指し、関連する食品業界の方々と共に活力に満ちた攻めの活動を展開する必要があると考えております。日本植物油協会は、こうした活動を中軸に産業界の直面する課題の解決に努力するなどまさに業界のプラットフォームとしての事業展開に鋭意、努める必要があると考えています。
 皆様の倍旧のご交誼とご指導を賜りますことをお願い申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

(以上)