一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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植物油サロン

食に経験や造詣が深い著名人、食に係わるプロフェッショナル、植物油業界関係者などの方々に、自らの経験や体験をベースに、
食事、食材、健康、栄養、そして植物油にまつわるさまざまな思い出や持論を自由に語っていただきます。

第18回 歌舞伎のように、かぶりつきになる“おせんべい”が夢 株式会社天乃屋 専務取締役 大砂信行さん

「歌舞伎」と「おせんべい」ふたつの伝統を融合して生まれた「歌舞伎揚」

株式会社天乃屋 専務取締役 大砂信行さん

弊社の「歌舞伎揚」は、食べ出すと止まらなくなる美味しさがあり、途中で止めるのが難しいという方も多く、昭和35年の商品化を経て、お陰さまで今年は発売50周年を迎えました。今やスーパーやコンビニなど、主に関東・東北を中心に月間で約100万パックを販売する看板商品となっています。

歴史を紐解きますと、昭和28年の創業時は東京・世田谷で甘納豆の製造・販売を行なっていました。戦後の復興期であった当時は、お菓子の種類も現在ほど豊富ではなく、甘くて美味しい甘納豆は人々に楽しみを与える貴重な存在でした。その後徐々に他のお菓子も増えてきた頃、夏場の閑散期を迎えていたのですが、近所に揚げせんべいの工場がありまして、そこは夏場でも煙突から煙がモクモクとして忙しそうであったこと、そしてそこの揚げせんべいを頬張る人々があまりにもサクサクと美味しそうに食べている光景こそが、何より米菓業界への転換を決断させる契機となったのです。

歌舞伎といえば、日本の伝統的な古典演劇であり、かつては芝居といえば歌舞伎のことでした。17世紀の初め頃から歌舞伎踊りが町民層の人気を集めて発達し、次第に演劇的な完成度を高めていきました。一方おせんべいは我々の食生活に潤いをそえている幾多の菓子類の中でも日本独特のものであり、歌舞伎と同様に古くから皆様に親しまれてきました。そこで弊社ではこの両方の伝統文化を融合して伝えていこうと、おせんべいの包装袋に歌舞伎で使用されている定式幕<※萌葱(もえぎ)・柿・黒の三色で構成されている、歌舞伎舞台の正式な引き幕>の模様を取入れ、おせんべい一枚一枚に歌舞伎の家紋をデザインしたものを刻印し「歌舞伎揚」と命名しました。現在の「歌舞伎揚」は、お客様の嗜好の変化に合わせてソフトに仕上げるようになり、特徴であった家紋のデザインがはっきりと見えにくくなっていますが、以前は堅めに仕上げていたため、家紋のデザインが鮮明に見えていたものです。

ほんのり甘口の醤油味でサラっと揚げてありパリパリした歯ごたえの「歌舞伎揚」は、当初は一斗缶で出荷し店頭でバラ売りしていたものを袋入りに変え、やがてお客様のご要望に合わせ、現在のような食べ易い個包装タイプへと変化していきました。様々なお菓子が個包装されるようになったのは、ここ30~40年前のことでしょうか。

小さなお子さまにお菓子をあげると、笑顔を振りまきながら、とても嬉しそうに頬張りますよね。このようなシーンを世代を問わず老若男女に、いつまでも楽しんで頂けるようなお手伝いをすることが、弊社の使命であると考えています。

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こめ油が支えている、揚げせんべいの香ばしさ

米菓というものは澱粉の性質を利用して膨らますため、米質はもちろん製粉の仕方、蒸かし方や乾燥の仕方によって、全く異なる生地になります。焼き方や揚げ方も含め、永年の経験に基づいた技術を高いレベルでマニュアル化することにより、常に安定した商品を供給できる体制を整えていくことが大切になります。簡単に作れるように見えますが、実際には、浸漬時間や、搗(つ)き方、練り方などによって、澱粉の糊化の程度や製品の膨らみ方(膨化)が大きく異なり、香りや味わいに大きな差が生じていきます。そして最後に秘伝の味付けを加えることで、あの独特の揚げせんべいの風味が生まれるのです。

弊社には特許というような独自技術こそありませんが、生地づくりをはじめ、型抜き、フライといった一連の揚げせんべい作りの工程において、水分管理、油の温度管理(※天ぷらやかりんとうは160~180度なのに対し、おせんべいは200~250度と高温)、揚げる釜の適正な大きさなど、ひとつひとつの工程に独自のノウハウを持って丁寧に取り組んでいます。米菓に転換した当初は、毎日失敗した生地を味噌汁に入れて食べていたと社長が言ってました(笑)。さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、現在のお馴染みの味覚に辿り着いているのです。

そして揚げせんべいの出来を左右するのが植物油といえるでしょう。揚げせんべいには、こめ油が多く使われています。こめ油は油っぽくならないので、揚げせんべいの食感が失われることがありません。その名の通りこめ油はお米から作られています。揚げせんべいが香ばしいのは、実はこめ油のおかげなんです。弊社ではこめ油とパーム油をミックスしてカラッと揚げるようにしています。パーム油はあまりご家庭では使われていませんが、安定性が良く、あっさりとしています。おせんべいやおかきの袋を開けたときにフワッと香ばしさが匂い立つのは、植物油がしっかりと、その素材が持っている風味を支えているからなのです。

安全面では一定の保存性の確保の視点から、商品が酸化していないかどうかを一日に何度もチェックして、鮮度の確認・検査を行っています。どの食品にも共通しますが、安全で、消費者の皆様に安心して召し上がっていただける商品であることが何よりも重要です。そのためにも、植物油の選定とその鮮度管理には細心の注意を払いながら、その効果を最大限に引き出していきたいと思っています。

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試作品の検証場所でもある直売店

東京工場の直売店では、「われせん=製造過程で割れてしまったり、製造時に形の良くないおせんべい」を販売しており、安価で購入することができます。また「本日の特売品」は、市場の半額で購入することができることもあります。いわゆる“アウトレット・ブーム”にも乗った形でテレビでも紹介され、「歌舞伎揚」だけではなく、色々な種類の揚げたて焼きたてでサクサクの米菓が陳列され好評を博し ています。

私のおすすめは、「古代米(黒米)」を使った「古代米煎餅」と「黒米入おこげ煎餅」で、お米が形のまま残っていて独特の食感を醸し出しているんです。

このほか、焼せんべいの中では、特注の「ざらめ」をたっぷり掛けた「堅焼きざらめ」が人気。味付けには、たまり醤油をベースにしたタレをしっかりとからめ、大粒のざらめとのコントラストがはっきりした味に仕上がっています。

また、この直売店の良さは、いわゆる試作商品を陳列して、お客様の反応をダイレクトに確かめることができること。お客様の反応をヒントにトライアルを繰り返すことで、お茶うけとしての代表的な商品をここから発信していけるといいですね。

原料としては、代表的な「うるち米」だけではなく、「もち米」や「黒米」などを使い分けたりブレンドして使用することで、それぞれの特徴を活かし、美味しくするように研究を続けています。

ご存知のように弊社は、「歌舞伎揚」をはじめとしたおせんべい、あられ、おかきなどを扱っている米菓の専業メーカーです。これからも、米菓の専業メーカーとしての誇りを持って商品開発を心がけていくことに変わりはありません。仕事の合間に、家事の合間に、あるいは団欒の時間に、お一人で、お友達と、ご家族で・・・。シチュエーションは様々でも、米菓を食べる時間がとても楽しみになり、思わず笑顔がこぼれるような、言いかえれば「歌舞伎揚」のように、時として無性に食べたくなるものを生み出していければと考えています。

プロフィール 株式会社天乃屋 東京工場・直売店

株式会社天乃屋 東京工場・直売店

平成15年に完成。
揚げたての天乃屋の米菓がたくさん並び、ここでしか発売していない商品も数多い。
中でも人気なのは「こわれせんべい(われせん)=製造過程で割れてしまったおせんべい」。

希望すればオリジナルの詰合せや宅急便での発送も可能で、店内ではお茶やコーヒーなどの無料サービスも実施している。

住所:東京都武蔵村山市伊奈平2-17-2
TEL.042-531-5055

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