一般社団法人 日本植物油協会 社団法人日本植物油協会は、日本で植物油を生産している企業で構成している非営利の業界団体です。

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植物油サロン

食に経験や造詣が深い著名人、食に係わるプロフェッショナル、植物油業界関係者などの方々に、自らの経験や体験をベースに、
食事、食材、健康、栄養、そして植物油にまつわるさまざまな思い出や持論を自由に語っていただきます。

第12回 日の出とともに目覚め、畑の野菜を味わう晴耕雨読の田舎暮らし エッセイスト、画家、農園主、ワイナリーオーナー 玉村豊男さん

自然のサイクルのままに生きる暮らしで、より健康に

エッセイスト、画家、農園主、ワイナリーオーナー 玉村豊男さん

1991年に長野県東御市に移住し、ぶどうや野菜、ハーブを育てる農園「ヴィラデスト」を開いて16年になります。妻の希望を受け、「思いもよらなかったことをしてみるのも面白そうだ」と始めた田舎暮らし。輸血から肝炎を患ったり、通風や血糖値に悩んだりした経験も畑作りを始めたきっかけです。田舎暮らしと自己コントロールのおかげで、今は体調も体重も良好。すっかり田舎暮らしが気に入り、もう都会では生活したくないと思うようになりました。夏は日の出とともに目覚めて犬の散歩をし、絵を描く。仕事は晴耕雨読。農園「ヴィラデスト」のカフェの手伝いや昼寝もします。1日の労働のあとは夕食を作って食べ、早めに休む。自然のサイクルのままに生きる暮らしです。

畑を作ってわかったのは、農業は本当にお天道様次第で思うようにならないということ。うまく実っていた野菜が嵐でだめになったり、虫に食われてしまったりする。ある意味理不尽ですが、不可抗力だから「だめなものはだめ」とあきらめがよくなります。でもそれは失敗ではありませんよね。そんなときも、夜には今日も精一杯やったと満足し、また明日がんばろうと思える。東京暮らしと違い、1日のうち目に見えてお金を稼げる部分はほんの一部ですが、それが本当の人間の生活ではないでしょうか。

エッセイも野菜もワインも、物作りはその途中が面白い

2003年から始めたワイン造りも同じです。いいワインの条件は、いいぶどうが7割、技術や経験などが3割。100%自然の力でも人間の技でもないのが面白いところです。毎年ぶどうの出来は違うし、条件や天候などにも左右される。ワインの味が時間の経過で変化することもあります。だから飲むよりも造るほうが100倍面白い。僕はもともと物作りの経過を楽しむのが好きなんです。自分で手を動かして物をいじり、それが動いて出来上がっていくことに興味があります。だからエッセイや絵も含めたすべての活動は、自然とつながり、広がってきたもの。好きなときにやりたいことをしたい。だから仕事も趣味も生活そのもの。いつもそばにいろいろ好きなものがつまったおもちゃ箱がある感覚ですね。今日は原稿よりかぼちゃの絵を描きたいと思ったら「編集者は待ってくれるけど、野菜は待ってくれない!」なんて言って絵を描いてます(笑)。

家では毎日僕が料理を作りますが、料理も作る途中が面白いし、それを喜んで食べる人の顔を見るのも楽しい。「ヴィラデスト」のカフェでおいしそうに料理を味わう人を見るのも嬉しいですよ。僕が料理に目覚めたのはヨーロッパを貧乏旅行していた20代の頃。食事どきには必ず家族や友人と一緒にテーブルを囲み、2時間はかけておしゃべりと食事を楽しむフランス人の生活は素敵だと思いました。子供もそこで社交やマナー、コミュニケーションを学びます。たとえ言葉が通じない旅人でも一緒に食卓を囲んで「おいしい」と笑顔になれば気持ちは通じる。それは言語学と同じですね。

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畑でとれたて野菜料理には、香りづけの植物油が欠かせない

今、家で僕が作る料理は畑の野菜が中心。昼はめんなど炭水化物をとり、夜は肉にたっぷりの野菜を添えます。野菜はグリルやオーブンで焼いてオリーブオイルと醤油を少したらしただけといったものが多いですね。畑でとれたての新鮮な野菜だから、それだけで十分おいしいんです。食材本来の味を生かす料理が多いから、香りづけに役立つ植物油はたくさん持っていますよ。和食を作るときはごま油やえごま油を使うし、天ぷらには太白。くるみを和えるなら、やっぱりくるみ油が合います。植物油は基本的に加熱せずに生で、それぞれ異なる香りを楽しむのがいいですね。大好きなサラダを作るときも、油と酢を使ったドレッシング作りは無限の楽しさがあります。

植物油といえば、以前ルーマニアに行ったとき面白い料理に出会ったことがあります。豚肉に小麦粉の衣をつけた天ぷらなのですが、ヨーロッパでは珍しくディープフライにしてあるのです。考えてみると、そのときは綿花の季節。綿実油で揚げたフライだったのです。そのように油をしぼれる植物が多くとれる土地には、やはりその油をたっぷり使う料理があるのですね。面白いものだと納得しました。

そのようにとても大切な食ですが、最近ではその安全性にかかわる問題が起きています。昔なら生鮮食料は近隣でとれたものを食べるのが当たり前でしたが、今は世界のどこで誰が作ったものかわからない。グローバリゼーションに個人の生活がさらされているということです。生産者と消費者が関係を持てる世界を作り、生活を変えていくことが必要なのではないでしょうか。よりよいもの、高級なものをと無限の欲望に躍らされるのでなく、特別なブランドでなくても近くでとれたての新鮮な野菜ならおいしいことを知り、それがよりおいしくなるよう料理を工夫する。ふだん食べるものは、ふつうにおいしければよしとする。それが生活というものだと思うのです。

プロフィール 玉村豊男

玉村 豊男 (たまむら とよお)

エッセイスト、画家、農園主、ワイナリーオーナー

1945年生まれ、東京都杉並区出身。
東京大学仏文科在学中にパリ大学へ留学。
77年「パリ 旅の雑学ノート」を発表。以来、旅、食、田舎暮らしなど幅広い分野で執筆を続ける。

91年より農園「ヴィラデスト」を経営、2003年にはワイナリーを併設、続いてカフェ、ショップもオープンし、農園の野菜やハーブの料理を提供している。 

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