「日本人の栄養所要量」の位置づけと改定手順等について
 「日本人の栄養所要量」は、国民が心身を健全に発育・発展させ、健康の保持・増進と疾病予防のために標準となるエネルギー及び各栄養素の摂取量を数値で示したものである。示された栄養所要量は、国の健康増進施策、栄養改善施策等を樹立する際の基本となるものであり、また、国の食料施策や学校教育等各方面においても利用されている。
 この「日本人の栄養所要量」は、昭和34年に策定されたが、その後、国民の体位の向上や人口構造、食生活の変化に対応するために数次の改定が行われ、平成12年度から第6次改定が適用される。
 改定するに当たっては、栄養に関する専門家たちによる策定検討会を設置し、さらにエネルギー、脂質、たんぱく質、無機質(ミネラル)、ビタミンに関する小委員会を設置してそれぞれが調査検討を重ねて算定される。このように算定された案は、さらに策定検討会、起草委員会などで慎重に検討され、公衆衛生審議会健康増進栄養部会で審議して、公衆衛生審議会会長から厚生大臣に答申されて決定される。
 今回の改定のポイントは、食事摂取基準の考え方を導入するなど最新の知見を探究し、可能な限りこれを取り入れたこと。従来の栄養所要量が集団を対象にし、栄養素欠乏症を解消して、健康維持、さらに健康保護を目的として策定されてきたことに対し、今回の「第6次改定日本人の栄養所要量 -食事摂取基準- 」は、従来のものに加えて、健康増進、慢性非感染症の危険要因を軽減・除去するための指標として策定されている。このことにより、集団だけでなく個人をも対象として、生活習慣病の一時予防に取り組むために活用できるものとなっている。
 今回の策定項目は、エネルギーと、糖質及び食物繊維、脂質、たんぱく質などの3大栄養成分、並びにビタミン類13項目、ミネラル類13項目などの微量栄養成分である。
 これらの策定項目については、栄養素欠乏症を予防する観点から「平均必要量」、「栄養所要量」が算出されており、また、過剰摂取による健康障害を予防する観点から「許容上限摂取量」が算出されている。「栄養所要量」と「許容上限摂取量」との間の摂取量の幅が、栄養素摂取の安全域とされ、この範囲内において、個人の栄養状態を評価・判定し、それぞれに見合った栄養素補給が行われることとなる。
 これらの「平均必要量」、「栄養所要量」、「許容上限摂取量」などの数値を総称して栄養素に基盤をおいた「食事摂取基準」と呼称しており、日本人が健康を保護するだけでなく、健康増進、あるいは生活習慣病の予防のために、策定項目それぞれについて1日どれくらい摂取すればいいかを示したものである。
MEMU