遠慮がちな優れもの、植物蛋白食品
6.植物蛋白食品の用途
― 家庭用製品の開発が課題に ―

 植物蛋白は、種類・形状により多様な機能特性を有していますので、それぞれの特性に応じた利用ができます。少し専門的な表現になりますが、主な機能特性とそれを利用する食品の事例を整理すれば次のようになります。

栄養の強化(プロティンパウダー、菓子類)
乳化性、抱脂性によるエマルジョン安定性の向上および脂肪分離の防止(ソーセージ)
離水防止による肉汁の分離防止とクッキングロスの減少(ハム)
ゲル形成性、粘着性による肉塊の結着とスライス適性の付与(かまぼこ、ちくわ、プレスハム)
組織形成性による食感改良(パン、麺)
組織状、繊維状大豆たん白によるテクスチャーの向上(ハンバーグ、ミートボール、 餃子、しゅうまい)
痩せ、焼き縮み防止による品質向上(ハンバーグ、メンチカツ)

 このような特性を活用して、大豆蛋白は食肉加工製品、水産練り製品、冷凍食品、チルド惣菜、健康食品、菓子、飲料、アイスクリーム等に幅広く利用されています。中でも保水性がよく、優れたテクスチャーを有する粒状、繊維状大豆蛋白はハンバーグ、餃子、シュウマイ等の惣菜を中心に多くの用途があり、冷凍食品の製造上欠くことのできない素材となっています。また蛋白質の含有量が最も高い粉末状の分離大豆蛋白は、水に分散させた後、熱を加えると固まるという性質(ゲル化)があるため、ハムやソーセージ、揚げかまぼこ等の食感改善に利用されています。

 一方、小麦蛋白は大豆蛋白より利用の歴史は古く、あらゆる食品に添加利用されていると言ってもよいでしょう。粉末状蛋白は製菓、製パン、製麺等に、ペースト状蛋白はその粘性、結着性からソーセージ、ハム等の結着材に、粒状、繊維状蛋白は挽肉状の形態、食感を有しているためギョウザ、シュウマイ等の具材の一部やハンバーグ、ミンチボール等の食肉加工品や冷凍食品・惣菜類に多く用いられています。

 お気づきだと思いますが、これらはすべて他の食品の食感の改善や増量を目的とした利用です。それでは植物蛋白そのもので作られた食品はないのでしょうか?

 いいえ、既にいくつかの食品が開発され利用されています。がんもどき類、冷凍豆腐、冷凍厚揚げ、油揚げなどです。ただこれらは外食産業で利用されることが多く、普通のスーパー等で販売されることが少ないため、一般のご家庭にはなじみの薄い食材になっています。即席カップ麺の具材の一つである乾燥油揚げは皆様もおなじみでしょうが、それが植物蛋白から作られていることはご存じないかもしれませんね。このほかにも大豆から揚げ、ハンバーグなどもあり、食肉類で作ったものと変わらないような味わいがあります。麻婆豆腐作りは、豆腐の水切りが面倒で、炒めている間の型くずれが気になりますが、サイコロ状に作られた冷凍豆腐を利用すればそんな悩みからも解放されます。

 ただこれらの優れた商品を一般小売店で見かける機会は少なく、皆様の目に直接触れることが少ないことは残念なことですが、植物蛋白は他の食品の補助剤や増量剤というイメージが先行したことから、一般商品として販売しにくいという面もあるようです。

 植物蛋白は、健康増進に寄与する食品であることも明らかにされています。したがって、多くのご家庭に親しんでいただける魅力的な商品の開発は、これからの植物蛋白食品市場の発展に不可欠の課題と言えるでしょう。


【 図2 家庭でも使用できる植物蛋白食品の事例 】

冷凍とうふ 大豆から揚げ
図2 家庭でも使用できる植物蛋白食品の事例
資料:日本植物蛋白食品協会提供
PREVMENUNEXT