遠慮がちな優れもの、植物蛋白食品
2.植物蛋白とは?

 現在、農林水産物資の規格化と表示の適正化に関する法律(JAS法)に定められている日本農林規格では、植物蛋白を次のように定義しています。

 「大豆や小麦を原料として、それに加工処理を施し、蛋白質含有量を高めたものに加熱、加圧等の物理的作用によりゲル形成性、乳化性等の機能又は噛みごたえを与え、粉末状、ペースト状、粒状又は繊維状に成形したもので、蛋白質の含有率を50%以上に高めたもの」

 つまり大豆や小麦に含まれる蛋白分を加工したものであって、最終製品には蛋白質が50%以上含まれていなければなりません。

 この定義にしたがい、2つの代表的な蛋白食品を簡単にご紹介しましょう。

(1)大豆蛋白

 大豆蛋白は、前述のとおり大豆から油分を抽出した脱脂大豆(ミール)を原材料として作られます。ふつうの大豆には30%を超える蛋白質が含まれていますので、油分を取り去った脱脂大豆は蛋白質が40%以上含まれる高蛋白素材となります。この脱脂大豆から蛋白質を抽出し、組織状に仕上げたものが大豆蛋白となります。この製造工程から明らかなとおり、大豆蛋白は製油企業が副産物として製造しています。
 先に述べましたように、アメリカでは1940年代に脱脂大豆の高度利用を目的とする技術開発が進み、脱脂大豆から蛋白質を分離し、それを濃縮する「分離大豆蛋白」の生産技術が確立しました。この技術が世界に広まり、日本では、1960年代後半から分離大豆蛋白を製造するようになりました。大豆蛋白は加工適性に優れていることから、様々な加工食品の副原料として使われてきました。いまではハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、ハンバーグ、ミートボールなどの食品を製造するにあたってなくてはならない食材となっています。

(2)小麦蛋白

 小麦蛋白は、小麦粉からでんぷんを分離して得られる物質(グルテン)で、その主成分は蛋白質です。小麦粉に少量の水を加えて練り、更に多量の水中でこねるとでんぷんが除かれ、粘着性のあるグルテンが残ります。この工程は手作業によっても可能です。わが国で古くから“麩”が生産されていたのは、このような事情によるものと考えられます。無論、現在では小麦粉を製造する製粉企業や化工でんぷんを製造する企業が、工業的技術により生産しています。
 この粘着性のあるグルテンを乾燥させ、粉末状の活性グルテンを製造します。この活性グルテンは特徴のある粘弾性を有しており、その特性を利用して、かまぼこなど水産練り製品や畜肉加工品の品質改良材・増量剤として用いられてきました。また小麦粉の品質改良(蛋白分の強化)の素材としても利用されています。

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