世界に広がるパーム油
8.パーム油の更なる発展のために

  以上に述べたSPOは、現在のパーム油産業が抱える問題点の一つであると言うことができるでしょう。「既に開発を終えた先進国のエゴ」という批判をしつつも、世界の論調に対するマレーシアパーム油産業の回答ですが、本当にこれがコストを償う価格水準で受け入れられるということが保証されているわけではないのです。エゴと言われないためにも、これをどう受け入れるかが先進国に課せられた課題となっていくのではないでしょうか。

  このほかにも、パーム樹の多くが経済年齢を超過しており、その改植を進めることが喫緊の課題となっています。将来の発展のために不可欠であることは頭で理解できても、改植の直後の4~5年は収穫がなく、農家は収入が得られなくなります。このため、政府とパーム油業界は協力して補助金を支出して計画的な改植を奨励してきましたが、昨年のように価格が高騰すると目先の高収入を得ることが重要となり、計画が頓挫するという事態が生じます。

  もう一つは、パーム果実収穫が危険で非常な重労働であるという問題があります。30年、40年を経過するとパーム樹は25mもの高さに到達しますが、これを長い柄のついた刃物で叩き切って収穫されています(図9参照)。このため、はしご車のような高所で収穫作業を行う機械の開発も進められていますが、高価であることや斜面での利用が困難であることなどの問題があります。また、パーム農場で働く人の多くは、インドネシア、スリランカなどの近隣諸国からの出稼ぎが多いことから、高価な新規投資ができないという事情もあります。

  世界最大の植物油にも、大きい悩みがあるのです。

【 図9 パーム果実の収穫風景 】

図9 パーム果実の収穫風景
資料:図3に同じ
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