世界に広がるパーム油
1.大豆油を追い抜いたパーム油

  世界の植物油の生産量を正確に把握することはできませんが、統計が整備されている国の資料や独自の推計法によっていくつかの資料が示されています。

  その代表的なものの一つであるドイツのSTA Mielke Gmbh社が発行しているオイルワールド誌は、2004/05作物年度(10月から翌年9月までの12ヶ月)にパーム油の生産量が大豆油を追い越し、世界で最も多く生産される植物油になったことを伝えています。

【 図1 主要植物油の生産量の変化 】

(単位:百万トン)
 図1 主要植物油の生産量の変化
資料:オイルワールド誌年報及び月報

  世界の植物油の生産量は1990年代半ばから急速に増加しました。その背景には、経済力を高めてきた中国はじめBRICsと称される国々で植物油需要が急増することが見えてきたことから、主要国が生産の拡大競争に入ったことがあります。特に、大豆は南米の2カ国(ブラジルとアルゼンチン)が耕作面積を飛躍的に拡大し、両国でアメリカを追い越す存在となりました。この大豆生産量の増加テンポは驚くべきものでしたが、更に、それを上回る勢いで増加したのがパーム油でした。

  約30年前、1980/81年の生産量は、大豆油が約1,340万トンに対しパーム油は約460万トンでした。そして、その後の25年の間に両者の地位は逆転し、生産量のレベルもパーム油が4,400万トン、大豆油が3,700万トンと飛躍的に増加しています。他の植物油も増加をしていますが、この2つが競い合うように増加し、拡大する需要を満たす供給を実現させてきたといえるでしょう。

  いまから10年前、オイルワールド誌はいずれパーム油が大豆油を追い越すという長期予測を示していました(1999年5月)が、その到達時期は2010年以降で、数量は約3,500万トンとしていました。しかし、この予測より5年も早く実現し、生産量も予測レベルを遙かに超えることとなりました。パーム油とともに生産されるパーム核油(パームの種から抽出した油脂)を合わせた生産量は2008/09年には約5,000万トンになります。

【 図2 世界のパーム油と大豆油の生産量の変化 】

(単位:百万トン)
図2 世界のパーム油と大豆油の生産量の変化
資料:図1に同じ

  1990年代半ばまで、世界の植物油市場は大豆油に牽引されてきましたが、それ以降は、大豆油とパーム油の2大油脂が世界市場を牽引することになり、これらの需給や価格が、他の油種の需給や価格に大きい影響を及ぼしています。

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