ひまし油のお話し

5.ひまし油の最近の情勢と今後の見通し

 国際市場における穀物・油糧種子需給の逼迫と価格の高騰は、一方で輸出国が自国内の消費を確保するため輸出規制を行う動きまでもたらしました。このところ、投機資金の引き上げなどで過熱気味だった市場に少し変化が見られますが、一方では生産コストが著しく上昇していることから価格が大幅に低下することはなく、今後も高価格が維持されることが予測されています(OECD/FAO農業需給予測2008年。)

 ひまし油は食用ではありませんが、このあおりを受け価格が高騰し、世界の価格指標となっているロッテルダム相場は2年前の約2倍に跳ね上がっています。

 ひまし油は工業用原料ですが、炭酸ガスの発生量を相殺(カーボンニュートラル)できる再生可能資源としてその利用を拡大しようとする取り組みが活発化しています。化石資源に代わり、ひまし油からナイロンなど植物性プラスチックの製造が可能であることから、ひまし油の需要はますます拡大していくことが予想されます。世界の食料価格高騰の影に隠れていますが、ひまし油もバイオ資源として新たな利用の道が模索されているのです。

 これとともに、海上輸送費用が上昇していることも、他の食用農産物や植物油と同様に大きい問題となっています。これまで、インドから日本へのひまし油の輸送は主に小型タンカーに頼ってきました。しかし、いまや大輸入国に転換した中国向けのひまし油輸送のほとんどが、フレキシブルタンクによるドライコンテナーでの輸送に切り替わりました。このため、東アジア向け小型タンカー船の配船数が減少しました。これに加え、2007年から国際海洋汚染防止条約が改正され、転覆時の海洋汚染の拡散を防止するため、植物油の海上輸送には二重底を有する船を用いることが義務づけられ、この要件を満たす船腹の確保が非常に難しくなりました。燃料の高騰だけではなく、このような事情による船腹の需給がタイトになったことが、海上輸送費の上昇をもたらしています。

 このため、日本のひまし油メーカーも、フレキシブルタンク内蔵のドライコンテナーでのひまし油輸送への切り替えができるよう陸揚げ装置の改造を進めています。

 さあ、ひまし油が私達の日常生活に欠くことのできない油であることがお分かりいただけたでしょうか。日本植物油協会の会員企業は、供給国との友好関係を深め、関連する工業会との協力しながら、これからも貴重なひまし油の安定供給に向けて努力を続けて参ります。

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