タイトル


大豆油輸出先はアジアが中心

 2002年の大豆油(原油)輸出額は12億6,287万ドル、数量は323万5,979トンで、前年よりそれぞれ26.3%、0.6%増加しました。最大の輸出先はインドで、輸出数量が108万5,864トンと総輸出数量の約3分の1を占めました。次いで、中国向け52万1,039トン、バングラデシュ向け19万4,100トン、イラン向け17万1,696トンと続いています。輸出先上位6カ国のうち第5位のペルーを除けば、アジアと中東の国々となっています。また、上位10カ国のうち5カ国が、バングラデシュ、イラン、マレーシア、エジプト、モロッコとイスラム教諸国によって占められています。

 一方、精製油の輸出額は6,404万ドル、数量は12万2,811トンで、前年比よりそれぞれ15.9%、2.3%増加しました。最大の輸出先はロシアで、輸出数量は3万4,769トンと総輸出額の28.3%を占めました。次いで、アンゴラ向け2万2,466トン、ドイツ向け1万1,601トン、フランス向け6,000トン、キューバ向け5,414トンと続きました。ロシア向けの輸出数量は2000年には1万7,088トンとドイツ向けの1万8,303トンを下回っていたのですが、2001年に3万4,238トンと急増し、2年連続で第1位となりました。日本向けには2002年に11キログラムが記録されています。おそらく、サンプルとしての輸出であったと見込まれます。
※注:ページ下の大豆油輸出数量はFAO統計、このページの数字はアルゼンチン政府の貿易統計であるため、一部整合しないところがあります。


急減するひまわり油の生産

 ひまわり油は、大豆油に次ぐ生産規模を誇り、国内の植物油生産の約4分の1を占めています。1990年代にはひまわりの作付面積、生産量ともに増加を続けてきました。1992/93農業年度には約300万トンであったひまわり種子の生産量は、1998/99年度には700万トン近くに達しました。しかし、1999/2000年度から減少に転じ、同年度の生産量は約600万トン、さらに2000/2001年度には一挙に318万トンと1990年代はじめの水準まで減少しました。2001/2002年度のひまわりの作付面積は199万ヘクタール、収穫面積は192万9,000ヘクタール、種子の生産量は383万トンと前年よりやや回復しました。1ヘクタール当たりの生産量は1,649キログラムとなります。ひまわりは、主にブエノスアイレス州、コルドバ州、ラパンパ州の各州で栽培されています。

 ひまわりの生産がこのように減少してきた理由として、1990年代終わりに国際市場で供給過剰となったことに加え、一部の国における保護政策のために国際価格が崩れたことが、関係者から指摘されていますが、大豆の収益性が高く、ひまわりから大豆への転換が進んだことも影響しています。

 ひまわり種子の一部は菓子の製造に用いられることもありますが、ほとんどは製油原料として利用されています。2001年の搾油数量は前年より39%減少し、310万トンとなりました。これから、ひまわり油とミールがそれぞれ130万トン生産されました。

 ひまわり油は、大豆油とは異なり国内消費が多いことが特徴です。マイルドな味わいとかすかに黄色がかった色合いにより、家庭用、業務用の両方で好まれ、マヨネーズやマーガリンの加工用原料としても広く利用されています。
ひまわり油の消費量は、生産の伸長にあわせて1990年代を通じて増加を続けました。1人1年当たり消費量は、1992年の11.8キログラムから2000年には15.0キログラムにとピークに達しましたが、2001年には12.0キログラムへと急減しています。


ロシアは精製ひまわり油の大切なお客様

 2002年のひまわり油(原油)の輸出額は4億6,513万ドル、輸出数量は91万9,958トンで、前年よりそれぞれ38.9%、8.2%増加しました。最大の輸出先はベルギー・オランダで輸出数量は35万4,869トン、全体に占める割合は38.6%でした。

 これに、フランス(11万4,786トン)、イラン(8万8,700トン)、エジプト(4万5,867トン)、マレーシア(3万484トン)が続いています。ベルギー・オランダとフランス向け輸出量は、2002年に前年よりそれぞれ7.8倍、5.7倍へ急増しました。

 ヨーロッパ向け輸出は、2000年、2001年に輸出が皆無だったスペイン、イタリアにも、2002年には多くの数量が輸出され、ヨーロッパにおいてアルゼンチン産ひまわり油の評価が高まっていると関係者は観測しています。一方で、2000年に58万5,125トンで最大だったインド向け輸出は、2002年には1万1,000トンへと急減しました。価格が相対的に低い大豆油、パーム油などに需要がシフトしたものと考えられます。

グラフ

 5リットル以下の小型容器入り精製ひまわり油は2002年に金額で5,905万ドル、数量で8万6,780トンが輸出されましたが、前年よりは大幅な減少となりました。最大の輸出先はロシアで、輸出数量は5万3,587トン、全体の61.8%を占めています。主要搾油メーカーであるモリーノス・デ・ラ・プラタ社が旺盛な投資を行い、ロシアの市場開発に成功したことがその背景にあります。反面、第2位のブラジルへは2000年には2万1,796トン輸出したものが6,697トンに、同じく2000年には1万4,567トンを輸出したペルー向けは、2002年には215トンへと急減しました。

 5リットル以上の大型容器入り精製ひまわり油は2002年に金額で697万ドル、数量で1万2,485トンが輸出されました。前年よりそれぞれ54.0%、36.1%と大幅に増加しました。最大の輸出先はニュージーランドで、輸出数量は7,066トンと全体の56.6%を占めています。第2位はアラブ首長国連邦(UAE)で、2,000トンが輸出されました。

 このように、アルゼンチンはひまわり油の大輸出国ですが、日本には輸出されていません。日本市場では、植物油が“サラダ油”として売られることが多いため、大豆油と比べて単価が3割ほど高いひまわり油が受け入れられることが困難なのではないかと関係者は考えています。


オリーブ油はやっぱり高級品

 アルゼンチンの食生活では、ミラネサ(ミラノ風)と呼ばれる牛肉や鶏肉料理、モッツアレラ・チーズを揚げた料理など地元で親しまれている料理やサラダなどに油を欠くことはできません。ただし、牛肉の調理では鉄板に油をしかずに牛肉が持つ油分を溶かし、それで風味を付けるのが一般的になっています。

 アルゼンチンではひまわり油が消費の主体となっていて、大豆油はじめ他の油の消費は限定的です。しかし、イタリア移民が多く、イタリア料理が食生活の大きな部分を占めるため、レストランに行くとほぼ例外なくオリーブ油が置かれ、サラダのドレッシングにも欠かせない存在となっています。話は少し逸れますが、アルゼンチンではサラダドレッシングに酢やワイン・ビネガーの代わりにレモンがしばしば利用されます。実は、アルゼンチンは世界最大のレモン生産国でもあるのです。

 なお、アルゼンチンでもオリーブ油はプレミアム商品で、価格が他の油と比較して著しく高くなっています。「レストランでは無料だからオリーブ油を使うけど、家庭での消費用には割高なオリーブ油は買わない。」というのが、ちゃっかりした庶民の感覚のようです。


* 海外植物油事情の記事は、日本貿易振興会(JETRO)ブエノス・アイレスセンターの稲葉公彦さんから寄せられた情報に基づいて作成しています。
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