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幅広い用途を持つパーム油

  パーム油は、日本ではなじみが薄いように見えます。日本では、パーム油が一般家庭向け食用油としてほとんど利用されていないことによるものかもしれません。しかし、実際にはマーガリン原料、スナック食品の揚げ油など加工食品に広く利用されています。日本で消費している植物油の中で3番目に多い油なのです。その他の国においても、植物油消費量の上位にパーム油が位置づけられていることが多く見られます。

 無論、マレーシアではパーム油が幅広い用途に利用されていますが、それらをご紹介します。


<食品部門での利用>

 パーム油には、他の植物油に比べビタミンAとEが多く含まれていることから、マレーシアでは、ビタミンA欠乏症の子供への補助食品や、ビタミンEの抗酸化成分を利用した老化防止や抗がん性効果を持つ食品として利用されています。また、マレーシアのパーム油関係者は、パーム油は通常の新陳代謝で簡単に吸収されるほど消化が早いため、健康志向の高い先進諸国や栄養不足に直面している国などで、必要なエネルギーと脂肪酸を満たすための重要な役割を担っていることを強調しています。

 パーム油生産量の約80%は食品用に利用されています。マレーシアでは、マーガリン、アイスクリーム、コーヒー用クリーム、ショートニングなどの加工食品の重要な成分として、また、ココアバターの代用品として菓子類やチョコレートにも利用されています。

 一般家庭においても、パーム油は最もよく利用される油で、日本のサラダ油のように揚げ物、炒め物などの幅広い調理法に用いられています。パーム油以外では、ココナツ油も一般家庭でよく利用されていますが、こちらは調理油としての用途のほかにマッサージオイルとしても利用されています。


<工業部門での利用>

 マレーシア政府は、食用への利用ばかりでなく、パーム油を工業用に利用することも推進してきました。その結果、マレーシアは世界のオレオケミカル市場の60%を占めるようになりました。以前はマレーシアからパーム油が輸出され、輸入国において化学製品に二次加工されるのが一般的な形態でした。しかし、近年はマレーシア国内で二次加工した製品を輸出するパターンに変化し、付加価値を確保するようになりました。日本でも、パーム油を輸入し、脂肪酸などの原料に利用していましたが、いまでは二次加工製品を輸入することが一般的になり、マレーシアにとってはオレオケミカルの主要な市場の一つになっています。したがって、いま日本に輸入されているパーム油のほとんどは食用に利用されているものです。


グラフ


 パーム油をベースとしたオレオケミカル及び脂肪酸は、品質に優れ、繊維、化粧品、医薬品、プラスチック及び潤滑剤などのさまざまな産業にとって欠かせない製品となっています。例えば、肌へののりがよいことから口紅等の化粧品に、泡立ちがよく芳香性が持続することから石鹸に用いられたりしています。また、パーム油の脂肪酸から作られたロウソクは、パラフィン蝋に比べて燃焼時間が長く、蝋のたれが少なく、あまり煙が発生しないとされています。このほか、香料、練り歯磨きの柔軟材及び保湿剤など幅広い分野で利用されています。

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