3.植物油の自給率は4%

 食料自給率の低下は、私たちの生活や社会とどのように関わっているのでしょうか。一つには、自給率の低下した分だけ日本農業の力が低下しているという見方ができます。この10年をみても、GDP(国内総生産)に占める農業生産の割合は1990年の2.6 %から2000年には1.4 %に低下しています。また、人口に占める農業従事者の数も、同じ期間に6.6 %から4.6 %に低下しています。ただ、これも、国内の供給力を超えた食料消費の増加や産業間の不均衡発展ということも考慮する必要があり、一概に断定ができないものです。

 もう一つは、食料供給の安全保障の観点から、安定供給に対するリスクが増大するという捉え方ができます。つまり、海外の生産国に依存する割合が高いため、安定供給を確保するために大変な努力と費用を必要とするということです。しかし、自給率が低下すれば反比例的に食料供給の不安が高まるというものではないでしょう。このことを、私たちの植物油について考えてみましょう。

 日本で生産する植物油の原料は、主に大豆と菜種です。このうち、大豆については近代的製油業が発足して以来海外に依存していましたが、菜種は国産原料として貴重な存在でした。しかし、昭和30年代後半に油脂原料の輸入が相次いで自由化され、一方で、選択的拡大を基調とする農政が展開されたことから、菜種の国内生産量は、1970年にはすでに1万7,000 トン台まで減少し、主要な原料の意味を失い、電車の窓から目にしていた菜の花畑はいつの間にか姿を消して行きました。

 つまり、国内には油脂原料を生産する農業はほとんど存在していない状態になりました。最近では、水田転作の推進や地域起こしの一環として、各地で菜の花の栽培を復活させようという動きはありますが、全国の菜種生産量に目立った変化をもたらすものではなく、統計上は1,000トン未満と記録されています。

 このほか、国産原料を使用した植物油としては、米ぬかを搾油するコメ油、落花生油、椿油があるぐらいで、その他は統計に上がってくるほどのまとまった量はなく、わが国の植物油自給率は4%にすぎないのが現状です。したがって、もし自給率の低下がそのまま供給リスクの増大に直結するとすれば、私たちの植物油は大変な不安を抱えていることになってしまいます。

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