特集1 植物油には、元気がギュッ!
 いよいよ夏本番。夏バテ防止には、"元気"の素がいっぱい詰まった植物油を賢くとるのが結構効果 的。植物油に秘められた栄養のパワーを解説しましょう。

◆植物油の"元気"へのはたらきとは
はたらき1
 エネルギーの供給源

■脂肪は効率よいエネルギー源
 私たちが毎日活動し健康を維持していくには、食物によってエネルギー(カロリー)を補給することが欠かせません。食物の栄養素のうち、身体の中でエネルギーに変えられるのは、いわゆる三大栄養素と呼ばれる、脂肪、タンパク質、炭水化物です。
 植物油はいうまでもなく、脂肪そのものです。実はこの脂肪、三つの栄養素の中で最も効率よく、効果 的にエネルギーを供給できる栄養素なのです。たとえば、お茶碗一杯のごはんは約180kcalですが、同じカロリーを植物油なら大さじ1杯半(約20g)でOK。夏の暑さでごはんがすすまないとき、口元に涼しい野菜サラダに植物油をたっぷり使ったドレッシングをかけて食べるというのは、なかなか賢い夏バテ解消策といえるわけです。

はたらき2
 健康に役立つ脂肪酸の供給源

■「不飽和脂肪酸」「必須脂肪酸」が健康に役立つ油のキーワード
 エネルギー供給のために脂肪をとるという意味では、植物油でなく動物性油脂でも働きは同じことです。でも、その脂肪の"質"に注目すると、植物油ならではのメリットがたくさんあります。
 油脂はいくつかの脂肪酸で構成されていますが、その脂肪酸はそれぞれに性質が違います(図表1参照)。これらを健康への働きという視点で比較すると、「不飽和脂肪酸かどうか」「必須脂肪酸かどうか」が重要なポイントになります。

■生活習慣病の予防に欠かせない「不飽和脂肪酸」
 不飽和脂肪酸の中でも、「多価不飽和脂肪酸(分子内に炭素の二重構造を2個以上持つ脂肪酸)」と呼ばれるものは、細胞膜や組織の形成、ホルモンの合成や調節、神経や記憶への作用など、私たちの成長と正常な生理機能を維持するはたらきをしています。また、体内のコレステロールを低下させる働きがあり、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防に役立つ成分です。
 また「多価~」ではありませんが、「一価不飽和脂肪酸」であるオレイン酸は、コレステロールのなかでも特に「悪玉コレステロール」だけを低下させることが知られています。
 植物油は、その脂肪酸の7割以上がこうしたすぐれた働きをもつ不飽和脂肪酸でしめられているのです(図表2参照)。

■体内で形成できない「必須脂肪酸」
 脂肪酸を語るのにもう一つ忘れてはいけないのが「必須脂肪酸」。これは身体の組織が正常に働くのに不可欠でありながら体内で作り出すことができず、食物を通じて補給しなければならない成分です。
 必須脂肪酸にはいくつかありますが、植物油に多く含まれるのはリノール酸とリノレン酸。リノール酸が欠乏すると、成長阻害、皮膚や腎臓の障害、受精能力の減退を招き、リノレン酸が欠乏すると、脳や血液の流動性に影響が出るといわれています。
 母乳には、この両方がバランスよく含まれているということからもその重要性がわかります。

■すぐれた成分の植物油  
あらためて図表2を見てください。植物油の主な脂肪酸はリノール酸、リノレン酸、オレイン酸です。リノール酸とリノレン酸は不飽和脂肪酸かつ必須脂肪酸である、メリットの高い脂肪酸。また、オレイン酸は先にご説明したように近年注目の不飽和脂肪酸。こうした成分構成の良さこそ、植物油の最大のメリットです。
はたらき3
 ビタミンE の供給源


■日本人のビタミンE摂取の3分の1を支える植物油
 植物油に脂肪が多く含まれるのはわかっていても、意外に知られていないのが植物油にはビタミンEも豊富だということ。日本人が摂取しているビタミンEの30%は植物油によるものなのです。
 ビタミンEには、血管を強くし、血液の流れをスムーズにする働きがあります。また、老化のスピードを遅らせる効果についても注目されています。ビタミンEの豊富な植物油は、まさに"元気"の素ですね。

◆“元気”のための植物油の理想的摂取とは 植物油が効率よいエネルギー源であり、私たちの身体にとって欠かせない成分を持つ食品であることはおわかりいただけたでしょう。でも、それだけを大量にとればよいという訳ではありません。エネルギー源として考えた場合、1日の必要カロリーの4分の1を脂肪からとるのが望ましいといわれています(厚生省「健康作りのための食生活指針」)。裏返せば、それだけの量は脂肪からとらなければいけないということ。極端な油ぬきダイエットが身体に良くないのは当然のことです。
 また、その脂肪の内訳として植物油だけとっていればいいかというとそうもいきません。動物性油脂は飽和脂肪酸やビタミン類を含み、魚は植物油とは別の不飽和 脂肪酸を含んでいてどれも欠かせません。要はバランス。厚生省の見解によると「動物の油脂:植物の油脂:魚の油脂=4:5:1」が理想的です。ただここで気をつけなければいけないのは、肉類にも油が含まれているので、その分を考慮しなければいけないということ。たとえば、ステーキを焼くときにサラダ油で焼けば、植物性油脂と動物性油脂の両方がとれるわけです。
 また、最近の研究では、先にお話しした必須脂肪酸についても、植物油に多く含まれるリノール酸のような「n-6系」と、植物油に含まれるリノレン酸や魚類に多く含まれるEPA、DHAなどの「n-3系」の脂肪酸のバランスは、一般的に「n-6:n-3=4:1」程度が望ましいとの見解も出てきています。言ってみれば「サバを食べるなら、塩焼きよりオリーブオイルでグリルしたプロバンス風がよさそう」ということでしょうか。
 だんだん話が難しくなってきたとお思いかもしれませんね。「どう料理すれば身体にいいの?」という疑問には別の機会にあらためてお答えするとして、植物油のすぐれたメリットを知っていただくこと、いろいろな食品と組み合わせてバランスよく食べるとよりメリットが生きてくるということを、この機会に覚えていただければ幸いです。
MEMU