遺伝子組換表示について

2.植物油における遺伝子組換えDNAについて

山田悟

[要旨]

 20世紀の頃、世界7カ国共同で実施された疫学研究(Seven countries study)において脂質摂取が多い国では心血管疾患による死亡リスクが高いことが示され(J Mt Sinai Hosp NY, 1953, 20, 118-139)、油の摂取は健康に悪いと考えられるようになりました。しかし、このような疫学データは“correlation does not imply causation”と言われるように因果関係に直結しているわけではありません。そこで、因果関係を検討するべく脂質制限の介入を行う臨床試験が実施されてきましたが、心血管疾患も総死亡もまったく減ることはありませんでした(Open Heart 2015, 2, e000196)。

 一方、逆に、脂質摂取が心血管疾患の予防につながるのではないかとの仮説も提唱されるようになり、脂質摂取を増やす介入を行った臨床試験において心血管疾患や総死亡の減少が示されるようになりました。当初のω-3多価不飽和脂肪酸のみならず(Circulation 2002, 105, 1897-1903)、その後、ω-6多価不飽和脂肪酸あるいはω-9一価不飽和脂肪酸の摂取を促す介入により心臓病や脳卒中が予防されたのです(N Engl J Med 2013, 368, 1279-1290)。さらに、最近では、飽和脂肪酸ですら、それを減らす介入をすることによりかえって総死亡や心血管疾患が増加することが示されました(BMJ 2013, 346, e8707)(BMJ 2016, 353, i1246)。

 こうした状況から、2015年の米国食事摂取基準は40年来の脂質制限政策を転換し、脂質制限は何らの健康上の利益ももたらさず、健康的な脂質摂取を増やすことこそが健康上の利益を生むということを人々は知らねばならないとするに至っています(JAMA 2015, 313, 2421-2422)。

 必ずしも植物油脂に限定されない話ではありますが、油脂の摂取こそが健康上の利益を生むことは世界的には栄養学の新たな常識です。ぜひ、こうした栄養学のパラダイムシフトを啓発する活動をみなさまとご一緒できればと願っております。

PREVMENUNEXT